その他の短編小説
C
トリシャ。
愛しい、トリシャ。
とうとう最後の時が来たよ。
僕はやっと君のところへ行ける。
奴らはまだ懸命に僕を生かそうとしているけれど、そんなのもう全然無駄だ。
奴らが僕に呼びかける。死ぬな、まだ死ぬな、とそう言う。
お前らの呼びかけなどに応えてやるもんか。
ざまぁみろ。僕は逝く。
僕はやっとこの暗闇から解放されるんだ………
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『次のニュースです。
オーストラリア大陸に特有の有袋類、その中でも特に貴重なフクロオオカミの最後の一頭・オスのベンジャミンが死にました。
フクロオオカミはかつてオーストラリアに数多く生息していましたが、人間の入植によって乱獲され、家畜を襲う害獣として大量に虐殺されました。
我々人類は、このような過ちを二度と繰り返さないよう……』
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いつか、きっと。
あの怪物たちが全滅する日がやって来る。
そしてもう一度ここに平和で穏やかな環境が戻ってくる。
その時までのしばらくの間、僕は眠ろう。
目を閉じて、その日を待ち続けよう。
いつか、きっと。
あの怪物たちがこの世から一匹残らず居なくなって、全き平和な日々が訪れる。
そうしたら……。
トリシャ、もう一度ここで逢おう。
君と、子供たちと、仲間と――。みんなで幸せに暮らそう。
楽園となったこの星で。
いつまでも、いつまでも。永遠に。
《おわり》
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