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A
(あの子たち、まだ庭にいるのかしら?)
そう思い、窓から庭を見てみると、案の定二匹はまだそこにいた。
いったい何をそんなに真剣に観察しているのだろう。野ばらの実というのは、猫にとって、それほどまでに魅力的なものなのだろうか。
「まさか本当に食べる気じゃないでしょうね?」
私は窓越しにじっと二匹を見つめていた。
すると、どこからか美しい黒猫がやって来るのが見えた。
優雅に身を翻しながら我が家の庭に入ってきて、そのまま二匹の隣にちょこんと座る。
ルルとキキよりもひとまわり大きいしなやかな肢体に、私の視線は釘付けになる。
(あの猫……)
私はじっと息を潜めた。
あの黒猫なら知っている。この辺りでよく見かけるオス猫だ。
どこかの家の飼い猫なのか、それとも野良なのか…さすがにそこまでは分からないが、とにかくここら一帯であの猫ほど美しい猫はいない。
その分プライドも高いのだろうか、人間がどんなに猫なで声を出して魚やキャットフードでご機嫌をとろうとしても、いつもするりとかわされてしまう。その鮮やかさは見事としか言いようがない。
そして、あの金色の瞳をかすかに細めて、なんとも魅惑的に微笑するのだ。
…いや、猫が笑うわけはないのだけれど、あの猫は、そうとしか思えないような表情をたまにする。
「あ……」
ほら、また。
窓ガラス越しにあの猫とルルとキキを見ている私の気配に気付いたらしく、こちらを見てフフッと笑った――ように見えた。
ふと顔を上げると、時計の針は深夜十二時を指していた。
「いけない。もうこんな時間……」
いつのまにこんなに時間が経っていたんだろう。私は読んでいた本を閉じると慌てて立ち上がった。
近くのソファで丸まっていたルルとキキが、その気配を察してぼんやりと頭を上げる。
私はそんな二匹に、
「ほら、もう寝るわよ」
声をかけると、大きな欠伸をしながらソファから降りてくる。
私はもう一度リヴィングを見渡してから、電気を消して寝室へと向かった。二匹もそんな私の後に続く。
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