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B
 「すごいねぇ。綺麗だね」
 飽きもせず水平線を眺めながら、私はそんなありきたりの言葉ばかり口にする。我ながらなんてつまらないんだろう。
 けれどあなたは優しく笑いながら、
 「そうですね」
 静かに傍にいてくれる。

 あのね。私、時々疑問に思うことがあるの。
 最初に出会った時、あなたはどうして私に声をかけてくれたんだろう。草むらから泣き声が聞こえてきて、「子猫でも捨てられてるのかと思った」って言ったけれど、本当にそうだったの?
 あなたは、どうしてあんな時間にあんな場所にいたの?もしかしてあなたも一人きりになりたかったの?
 何の関係もない私に、どうしてこんなに優しくしてくれるの?
 あなたの中で、いったい私はどういう存在なのですか?

 あなたの隣で海を見つめながら、次々に湧き上がるあなたへの質問。いつも聞きたいと思いながら、今まで一度だって聞いたことがない質問。

 「……」

 いつかさ、私がもうちょっと大人になって――たとえば十六歳とか二十歳くらいになって、少しでも自分に自信が持てるようになったら、そしたらあなたに聞いていいかな。
 今の私が思っているたくさんの疑問の答えを、あなたに聞いていいですか。
 私は心の中でそう問いかける。


 のんびりと公園を散歩した後、私たちは砂浜に下りて今度は海岸を散歩した。
 風も空気も寒くて、海水の色も綺麗とは言えなかったけれど、でもとても楽しかった。

 「風邪をひく前に帰りましょう」
 私が小さなくしゃみをして、あなたが笑いながらそう言って、やっと冬の海を後にした。

 去り際にもう一度水平線を眺めながら、
 「ね。また来ようよね?」
 無邪気に私が言うと、あなたはちょっとだけ考え込んだ。
 困ったように首を傾げて、私の顔をじっと見ている。

 私と来るのはもう嫌なのかな……。そんな不安が私の顔に表れたのだろうか。
 「もっと暖かくなったらね」
 あなたはそう言って笑った。





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