その他の短編小説 @ 永遠なんて欲しくない。 けれど、永遠に忘れたくないことがある。 永遠に忘れられない想いがある。 永遠なんて欲しくはない。 けれど、忘れないために……。 神様、永遠をください。 これから先の未来全部と引き換えに。 私に永遠をください。 もう二度と消えない傷を、この魂につけてください。 その人と逢うのは、いつも夕暮れ時だった。 川沿いのすすきの原を並んで歩きながら、田舎のローカル線のおもちゃみたいな電車を見送る。 みんなが慌しく家路を急ぐ中で、まるで私たち二人だけ時間が止まっているみたいに、のんびりゆっくりと川に沿って歩いていく。 私はその日一日あったことや、会わない間に自分が考えたことなどを、興奮して早口にならないよう気をつけながら、順番にあなたに話していく。 あなたは穏やかに微笑いながら、黙ってうなずいたり、ときどき控えめな意見を言ってくれたりする。 どうしてあなたと一緒にいると、あんなにもゆっくりと穏やかな時間が流れていたのだろう。 あなたと離れているときの私は、めまぐるしく移り変わる時間に振り回されて、とても心穏やかになんていられなかったのに。 私はあなたに話しかけながら、何度も何度もあなたの顔を見上げる。 あなたの笑った顔がとても好きだったから。 初めて出会った時は、第一印象最悪だった。 すすきの原に埋もれて隠れて泣いてるところを発見されて、なんだか偉そうに意見してきて、正直「なんだこのロリコン野郎」と思ってしまった。だって実際にあなたは私と十四歳も年が離れていたんだもん。 それが、どういうわけか『友達』になって……いつしか私はあなたを『好き』になった。 あなたと会っている時だけ、あなたと話している時だけが、私は本当の私で、それ以外は全部まがい物。 自分が思っていることを素直に口に出来るのは、あなたに対してだけだった。 [次へ] [戻る] |