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G

 東京に帰ってきた俺は、また元の生活に戻った。
 奇妙なくらい清潔で整った薄暗いスタジオの中で、まるで人形のように綺麗なモデルたちを撮り続けている。
 仕事が終われば仲間たちと酒を飲み、休日はドライブなんぞをして気楽に過ごしている。

 けれど……。

 俺の目に焼きついた、あの象牙の塔。いつも耳から離れない、あの炎の慟哭。
 あの国も、あの草原も、そこに横たわるもの言わぬ姿も、決して忘れることなんて出来ない。
 あの時見た風景も、聞いた音も、そして焼け焦げる象牙と立ちこめる煙の匂いも、きっと俺の記憶から消えることはないだろう。



 「俺さ……」
 あの国での最後の日、空港で俺はシンに言った。
 「もう一度ここへ来るよ。もっとちゃんと勉強して、いろいろなことが分かってから、もう一度ここへ写真を撮りに戻ってくる」
 「そうですか」
 シンはにこりと笑った。そして俺に右手を差し出した。
 「お待ちしています」
 俺はそのシンの手をぎゅっと握り締めた。



 あの象牙の塔の写真は、今も俺の部屋に飾ってある。そしてそれを見るたびに、俺は言いようのない痛み――焦燥感に襲われる。
 でも慌てることはない。
 俺は俺のやり方で、俺が本当に撮りたい何かを探していく。本当にやりたいことを探していく。
 そして、いつか本当に自分に自信が持てるようになったら、もう一度あの国へ行こう。
 あの悲しい象牙の塔ではなく、命に溢れた大地を撮るために………。






≪END≫


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あきゅろす。
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