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A
 でも違うんだ。
 俺が撮りたいのは、妙に痩せすぎた体に高級ブランド品を纏ったモデルでも、作られ計算された笑顔でめいっぱい笑うアイドルでもない。
 俺が本当に撮りたいもの――。
 それを求めて、俺はここへ来た。



 「野生動物の写真を撮りたい、と聞きましたが」
 事前に手配しておいた現地ガイドの青年――つまりシンは、空港で俺を出迎えるなり言った。俺はあいまいにうなずくと、彼の運転する四駆に乗り込んだ。
 「そうだな。ぜひ野生の象を撮りたいんだが、案内してくれるかい?」
 「象ですか……」
 一瞬シンが黙り込む。
 「無理なのか?」
 俺が尋ねると、シンは首を横に振った。そのまま黙って運転している。

 国際空港と呼ぶにはお粗末な施設を抜け、安定の悪いアスファルトの道をただひたすら走る。
 時折ガクンガクンと大きく揺られながら、俺は辺りの風景に目をやった。
 街と呼んでいいのだろうか。
 茶色い染みのついた白い壁の建物が道路沿いに並び、その前で子供たちがまぶしそうにこちらを見ている。建物は高くてもせいぜい二階建てか三階建て。
 清潔とか近代的とかいう言葉とは程遠い。
 海外に出るのは初めてではないが、いつも仕事で行くのはニューヨークやパリやホノルル。
 こういういわゆる『発展途上国』(今はこの言い回しも差別になるのか?)というところへ来るのは初めてだった。

 とりあえずホテルらしき場所に着いて車を降りる。荷物を降ろしてくれているシンに近づき、ポケットから紙幣を取り出し差し出す。
 「ありがとう」
 そう言う俺の顔を、シンはじっと見ている。受け取れと顎で紙幣を示すと、手を伸ばして俺の手を押し返してきた。
 「ワタシはガイドとして雇われたのです。その分のお金はちゃんともらってますから」
 はっきりとした口調でそう言われた。

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あきゅろす。
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