その他の短編小説
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人間の欲はとどまるところを知らない。
かつて人が築き上げた巨大なバビロンの塔のように。
空高く。そして地の底、海の底はるか深く。
それは叡智なのだろうか。
それとも間違いなのだろうか。
誰にもそれはわからない。
そこにあるのは、人間が残した確かな軌跡。ただそれだけ。
【象牙の塔】
今朝もブンブンとうるさい羽音で目覚める。
テントで寝泊りするようになってから、もういったい何日くらい経つだろう。時間の感覚がひどく曖昧だ。
頭の中で指を折る。ここへ着いてから一、二、三……。さて、何日経ったかな。
大きく伸びをしながら外へ這い出ると、ガイドのシン――本名は知らない――がペットボトルの水で顔を洗っているところだった。
「ノゾムさん、おはようございます」
たどたどしい日本語で挨拶してくる。
日に焼けた浅黒い肌に黒い目。顔立ちはどこか欧米風で、生粋の現地人とは思いがたい。まあ、そんなことはどうでもいいんだが。
「おはよう」
俺はぶっきらぼうに言い、頭を掻きながら周りを見渡した。
乾いた土、ススキみたいな植物、ところどころに固まって生えている樹木。三六十度同じような景色が延々と続いている。この風景をもう四日は見ているだろうか。
つい一週間前に日本を経った時はけっこう期待に胸膨らんでたんだけどね。
そんなことを考えながら苦笑する。
俺の名前は高崎望(たかさきのぞむ)。三十歳。職業はカメラマン。
これでもけっこう売れていて、有名モデルやアイドルの写真なんかも撮っている。
東京にいれば、職場では可愛い女の子たちに「ノゾム先生」ともてはやされ、夜になれば六本木あたりで朝まで飲む。そんな優雅な独身生活を送っている俺。
収入もそこそこあって、何の不満もないだろう。そんな風に人は思うかもしれない。
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