その他の短編小説
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秋はきっと、
私たちの知らない
いろんな魔法を
隠し持っているのです。
どうか皆さま、
ゆめゆめ油断なさいませんように。
【 金 色 】
日毎に深く濃く染まりゆく晩秋は、もし色に例えるなら金色。
きらきらと輝きながら、でもどこか柔らかく物寂しげな光の色。
それはちょうど秋から冬へ、季節が移り変わるための最後のお祭り。
お祭りはどんな時だって派手なほうがいい。それが終わった後の寂しさを少しでも紛らわすために。
だから金色。きらきらと光る金色。
木々の間から差し込む木漏れ日も、野原一面に輝くススキの穂も、澄んだ空気を突き抜けて地上に注ぐ月光も、みんなみんな金色。
ほら、うしろをご覧。君の後をついてくる影さえも―――。
「カナタ、ほら君、また影を置き忘れているよ」
突然くすりと笑われて、カナタは慌ててうしろを振り返る。
たった今まで遊んでいた公園のブランコの上に、小さな子供の影が所在なさそうに座っているのが見えた。ぽつんと、何とも頼りなさそうに。
ゆらゆらと揺れる影は、まるで自分を忘れた持ち主を責めているようだ。
「たいへんだ!」
飛び上がるようにして来た道を戻り、影が壊れないようにそおっと指先でつまんで持ち上げる。
良かった。どこも破れていない。うまく影を掬うことが出来た。
そんな風に安心したのも束の間。
「あれ?」
気のせいか、黒いはずの影のふちがうっすらと金色の光を帯びているように見える。
「ねえ、セツナ。僕の影、きらきら光ってる」
不思議そうに首を傾げながら見上げると、またくすりと笑われる。
琥珀の瞳が優しく笑いながらカナタを見つめていた。
「満月の光をいっぱい吸い込んでしまったからだよ」
「なあんだ。お月様のせいか。でも、僕、こんな派手な影は嫌だな。目立ってしようがないよ。夜道を歩くのにだって不便だ」
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