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万華鏡
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■雨上がり■



 ペンを置いて目線を上げる。外ではいつの間にか雨が止んでいた。
 ラジオをつけると、明日からしばらく晴天が続くと告げている。梅雨の長雨もここらで一寸小休止というところだろうか。
 彼は両手を高々と挙げ、気持ちよさそうに伸びを一つしてから、たった今書き終えたばかりの手紙を眺めた。

 涼やかな空色をした便箋をかざしながら、この手紙を受け取るべき相手の顔を思い浮かべる。
 きっと彼女なら、この手紙を読んで満面の笑顔でこう言ってくれるだろう。
 『相変わらず楽しそうね、遥一郎(よういちろう)さん』
 花のように笑った後、もしかしたら、これをとっかかりにして、彼よりもっとおもしろい出来事を引き寄せてくれるかもしれない。
 彼女はいつだって、自分なんかよりずっと物事を楽しむ能力に長けている。
 そんなところもまた彼女の魅力の一つなのだと思いながら、こんなことをお手伝いの山村雪枝(やまむらゆきえ)に言ったら、またしこたまからかわれるんだろうな、などと彼はぼんやり考える。

 「先生、よほど許婚の方のことがお好きなんですねぇ」
 以前にも彼女のことを口にして、雪枝にそう笑われたことがあった。
 「普通は親が決めた許婚なんていうと、本人同士は案外あっさりしたものなんでしょうけど、先生とその方は違うんですね。なんだか物語みたいで素敵ですね」
 ほうっとため息をつきつつそんな感想を洩らす雪枝は、最近流行の浪漫小説にはまっているらしい。
 「いったいどんな人なんですか?」
 そう問われて、彼が知る限りの彼女のことをすべて思い出してみる。


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あきゅろす。
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