万華鏡
A
ところが、そんなある日、みっちゃんが私を訪ねてきた。
突然の思いがけない出来事に、私は本当にビックリした。
「ごめんね、いきなり」
玄関の前ではにかみながら俯くみっちゃんの顔を、私はまじまじと見つめた。
いつ間にか背も髪も伸びたみっちゃんは、すっかり幼女から少女へと姿を変え、まるで初めて会う女の子のようだった。
「ううん。別にいいよ」
内心の緊張を隠しながら、私はできるだけ気さくで軽い口調を装った。
「どうしたの?あ、中に入る?」
家の中がちらかっていなかったか咄嗟に思い返しながら、私は早口に言った。みっちゃんは小さく首を振る。
「ううん。いいの」
「そう?」
断られて内心ホッとする。
「それより、ちょっと時間ない?」
「今から?」
思わず聞き返した私に、みっちゃんは困ったように首を傾げると、ごめん、と呟いた。
「そうだよね。忙しいよね」
「……」
私は返事に窮した。
特にこれといった用事があるわけではなかったが、何となくみっちゃんと二人きりになるのが煩わしく感じたのだ。
何かうまい理由をつけて断ろうか。
一瞬そう思った。
けれどみっちゃんの様子から、私に何か大切な用があるらしいことが察せられた。それを突っぱねるほどには、さすがの私も薄情ではなかった。
「少しなら大丈夫だけど」
私がそう言った途端、
「本当?」
みっちゃんはぱっと顔を輝かせた。
素直に喜ぶみっちゃんに、どことなく後ろめたさを感じながら、私は黙って頷いた。
「じゃあ、一緒に行って欲しい場所があるの」
そう言って、みっちゃんは綺麗な笑顔を見せた。
みっちゃんが私を連れて行ったのは、近所にある空き地だった。
今では住宅街の透き間にほんのわずかにある狭い場所になっていたが、私たちがもっと小さかった頃は、ちょっとした野球場くらいの広さがある草原だった。
春になると辺り一面に黄色いたんぽぽが咲いて、それは見事だったのを覚えている。みっちゃんも私も飽きもせずに花を摘んでは、花束を作ったり花冠を編んだりしたものだ。
思えば、あの頃が、みっちゃんと私が一番仲の良かった時期だった。
あれからまだ数年しか経っていないというのに、何だかずいぶん昔のことのように思える。
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