旅人シリーズ
G
「次にここへ来るのは十二年後かな」
帰り道、はるか遠くで輝く満月を眺めながら、彼がしんみりと言う。
僕は彼と並んで空を見上げながら、「そうだな」と頷いた。
すると突然、彼が思いついたように、
「そうだ。十二年後に、僕たちもまたここで再会しませんか?」
そう言った。
「ね、いいでしょう?また一緒に、恋人たちの逢瀬に立ち会いましょうよ」
そんな彼からの申し出を、僕が断る理由なんてあるだろうか。
「ああ、そうだね。そうさせてもらえると嬉しいよ」
僕が答えると、彼の顔がぱっと輝いた。
「ええ、是非とも」
彼は笑いながら右手を差し出した。僕も笑ってその手を握り返す。
僕たちは互いの顔を見てにっこりと笑いあった。
銀色に輝く満月が、そんな僕たちを、いつまでもいつまでも優しく照らしていた。
Fin.
[前へ][次へ]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!