旅人シリーズ
F
「とにかく、その羽はお前にやるよ。そのために買ってきたんだ」
僕はそう言うと、いつまでも胡散臭そうに青い羽をいじくり回している親友の顔を見て、思わず声を立てて笑った。
「で、結局その白い羽はどうなったんだよ?」
青い羽をくるくると弄びながら、親友は面白そうに訊いてくる。
どうやらかなり好奇心を刺激されているらしい。
僕はしめしめと思いながら、もったいぶって奴に言った。
「そこに落ちていたのは白い羽なんかじゃなかった」
「じゃあ、何?」
「うん。そこにあったのは……」
僕は奴の手の中の青い羽をじっと見つめた。
あれは今思い返しても、何とも不思議な光景だった。
「早く教えろよ」
奴が苛々したように言う。
「そこに落ちていたのは、前日のままの見事に青い羽だったのさ。しばらくふわふわと地面を漂っていたかと思うと、見る見るうちにたくさんの小さな青い鳥になって、最後には一斉に空へと飛んで行ってしまったよ」
僕がそう言うと、
「………はぁ?」
奴は今度こそポカンと大きく口を開けて僕の顔を見つめた。
その奴の間の抜けた顔に、僕も今度こそ大声で笑った。
Fin.
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