オリーブの木の下で
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戸棚のガラス扉の向こう側。
大切そうにしまってあるのは、いったいどんな宝物?
ガラス越しにそおっと覗いてごらん。
胸をわくわくさせながら。誰にも見つからないように。
もしかしたらそこに、君の知らない世界があるかも知れないよ。
ココ&空シリーズA
【オリーブの木の下で】
〜 不思議な羽のお話 〜
莉子(りこ)について、私が知っていることはまだそんなに多くない。
女の人で、会社員で、両親とは別々に暮らしている。未婚、子供なし。
今住んでいるお家は、大好きなおじいちゃんの忘れ物。人間の世界では『遺産』というらしいが、莉子と私は『おじいちゃんの忘れ物』と呼んでいる。
その『おじいちゃんの忘れ物』は、ぐるり周りを山に囲まれたものすごい田舎にある。
村おこしとかいうので、昔むかし学校があった場所を区画整理して住宅地として売り出したのはいいけれど、売り出しから十年近くたった今でも、ちゃんとお家が建って人が住んでいるのはほんの数軒しかない。それもほとんどが変わり者というか妙な人が多い。
まあ、莉子自身も変わり者らしいから、ご近所さんのことをとやかく言えた義理ではないけれど。
莉子が親しいのは、お隣のおばあちゃんと、少し離れたところにある丸太小屋みたいなお家のお兄さん。この二人には私もすでに面識がある。二人とも相当な変わり者だ。
莉子の周りはなんだか変な人ばかり。こういうのを人間の言葉では「類は友を呼ぶ」と言うらしい。ちなみにこの言葉を私に教えてくれたのは、お兄さんのお家で飼われているフェレットの金太郎と桃太郎だ。
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