オリーブの木の下で
E
やがて、
「私、莉子に隠し事なんて出来ないよ」
そうココは言った。
「だって私、莉子のこと大好きだし、それにたった一人の家族なんだもん。嘘や隠し事なんて絶対に無理。たとえ今は黙っていられたとしても、いつかきっと喋っちゃう。それに、私を助けてくれたあなたたちのこと、莉子にきちんと話したいもん。莉子だって、あなたたちにお礼が言いたいと思う」
一気にそうまくし立てるココに、二人は思わず笑い出してしまう。
「そうだね、君の言うとおりだ」
「湖子ちゃん、君は本当に素直な良い子だね」
二人はそう言って、順番にココの頭を撫でた。
「君、莉子のことが本当に好きなんだね」
黒髪の青年が幸せそうにほほ笑む。
その笑顔に、ココはまたしても奇妙な既視感(デジャ・ヴュ)を感じる。
(やっぱり私、この人のことを知っている……)
そう心の中でつぶやく。
そんなココに、黒髪の青年はあいかわらず笑顔で言った。
「さあ、毛皮もすっかり乾いたことだし、そろそろお家へ帰ろうか?」
「えっ?」
「ほら、もう雨も上がったよ」
青年が窓の外を見ながら言う。
ココが振り返ると、いつの間にか雨は止んで、窓の向こうに青く澄んだ空が広がっていた。
「じゃあね、湖子ちゃん」
金髪の青年に見送られて、ココと黒髪の青年は木の扉をくぐる。
背後でパタンと扉の閉まる音がして、ココは慌ててうしろを振り返った。
レンガ造りの小さなお店。入り口には『喫茶・雑貨 猫目堂』と書かれた看板がかかっている。
「こんな山奥で商売してるの?」
「うん」
「お客さんなんて来ないんじゃない?」
心配そうにココが尋ねると、
「ここに来るのはね、特別なお客さんなんだ」
黒髪の青年はそう言って笑った。
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