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オリーブの木の下で
D
 ココは不思議に思いながら、カウンター越しに立っている金髪の青年と、さっきから自分を抱っこしている黒髪の青年を見比べる。
 二人とも綺麗な顔に、とても優しそうな微笑を浮かべている。
 (あれ…?)
 黒髪の青年を見つめていたココは、ふいに奇妙な感覚を覚えた。
 青年の顔に見覚えはないはずなのに、どういうわけか、前にもどこかで会っているような気がするのだ。
 (おかしいな。私が知っている人間は、飼い主の莉子と近所の人と動物病院の先生だけのはずなのに)
 でも、たしかにどこかで会っている。その感覚がどうしても消えない。

 「あの、私たち、前にどこかで会わなかった?」
 黒髪の青年に尋ねると、一瞬驚いたように目を見開いた。
 しかし、すぐに首を振る。
 「ううん。僕たち、直接会ったことはないよ」
 「……」
 青年の物言いにひっかかるものを感じたココは、青年にさらに尋ねる。
 「じゃあ、私があなたをどこかで見かけたのかな?テレビとか、雑誌とか」
 「違うよ」
 青年は笑って首を振り続ける。
 ココにはどうも納得がいかない。

 そうだ。そもそも、どうしてこの二人はココの言葉が通じるのだろう?
 そのことに再度思い当たって、ココは今度こそ二人に訊いてみることにした。
 「ねえ、あなたたちは、どうして私の話していることがわかるの?」
 すると、二人は困ったように顔を見合わせた。
 二人ともココに本当のことを言っていいものかどうか迷っているようだった。
 ココはじれったくなって、青年の膝から飛び降りると、カウンターの上に座って二人を睨みつけた。
 「うまいこと言って誤魔化そうとしても駄目よ。私、そんなに簡単には騙されないんだから」

 胸を張って言うココに、二人は観念したように肩をすくめた。それから、じっとココの瞳を見つめると、
 「湖子、僕たちのこと、誰にも言わないと約束してくれる?」
 「え?」
 「お家に帰っても、莉子にもお友達の動物たちにも決して話さない。そう約束してくれるかな?」
 「……」
 ココはしばらく考え込んだ。
 そんな約束、果たしてちゃんと守れるのだろうか。



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