オリーブの木の下で
C
青年は黙ったまま、ココの探るような視線を受け止めている。
そんな青年に、ココはさらに質問しようとした。
「あの――」
ココが口を開きかけたとき、突然横のほうから白いマグカップが差し出された。驚いてココがその方向を振り返ると、金色の髪の青年が、ココにやさしくほほ笑みかけていた。
「どうぞ、湖子ちゃん。体があたたまるよ」
そう言ってにっこりと笑う。
ココの目の前――木のカウンターの上に置かれたマグカップを、ココはしげしげと覗き込む。大きなマグカップの中にはホットミルクが揺れている。
ココが胡散臭そうにマグカップを見つめていると、金髪の青年が笑いながら言った。
「猫舌の君のために、ちゃんとぬるく作ってあるから大丈夫だよ」
「……」
ココは無言で金髪の青年と黒髪の青年を見比べる。
二人が笑顔で頷くのを見て、ココはマグカップにおそるおそる顔を近づけた。
「ニャッ……」
一声鳴いて、ココは夢中でホットミルクを飲み始めた。
そうするともう止まらなかった。ごくごくと喉を鳴らしてホットミルクを飲むココの様子に、二人は思わず呆気に取られてしまう。
やがてココが口の周りをミルクでたっぷり濡らしたまま顔を上げると、
「おかわりはいかが?」
金髪の青年が尋ねた。
それなので、ココは急に恥ずかしくなり、もじもじと言い訳を始めた。
「あのね、今朝家を出るときにご飯を食べたきりだったの。だから、お腹がペコペコで、ついお行儀悪くしちゃった。……ごめんなさい」
そう言ってココがしゅんと項垂れると、黒髪の青年がココの頭を優しく撫でた。
「いいんだよ。それより、おかわりはしなくてもいいの?」
「うん、平気。ありがとう」
いつの間にか、ココの警戒心はすっかり溶けてなくなっていた。
お腹もいっぱいになり、すっかり体もあたたまると、ココはきょろきょろと室内を見渡した。
ここは、喫茶店だろうか。こぢんまりとした店内に、カウンターとボックス席が四つ。カウンターの横には木の棚が置いてあって、中にはいろいろなものが並んでいる。
(なんだか変わったお店だなぁ)
でもどこか懐かしい感じがするのは何故なんだろう。
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