オリーブの木の下で
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その夜、私と莉子は二人でお庭に出て空を眺めていた。
夜空には満天の星が溢れ、私たちの頭の上を天の川がきらきら光りながら流れていく。夜風にさらさらと笹の葉が揺れて、まるで音楽のように聞こえる。
「綺麗だねぇ」
うっとりと私が言うと、莉子も笑顔で頷く。
「これなら、ココの願い事もばっちりお星さまに見てもらえるね」
「うん、そうだね」
私も笑いながら、莉子と二人で作った七夕飾りを見上げた。
たくさんの願い事。少し欲張りすぎたかもしれないけど、夜空にはこんなにいっぱいの星があるんだもん、大丈夫、ちゃんと叶えてくれるよね。
「あら?」
ふいに莉子が声を上げた。
「どうしたの?」
「ほら、あの短冊。四色の綺麗なグラデーションになってるやつ。私たちあんなの書いてないよね?」
「え?どこ?」
「一番てっぺんのところ。金紙の星飾りのすぐそばにある短冊よ」
言いながら、莉子は私を抱っこして、その短冊が見える高さまで持ち上げてくれた。
私は首を伸ばして、莉子が言っていた短冊を覗き込んだ。
「うーん、どれどれ――?!」
そして、はっと息を呑んだ。
「どう?何て書いてあるの?」
下のほうから莉子の声が聞こえる。
私は短冊をじっと見つめながら、そこに書かれていることを読み上げた。
『可愛い妹・ココに五匹分の幸せが降りますように』
「これ、いったいどういうこと?」
私が不思議そうに莉子を振り返ると、莉子はしばらく考えてから、
「ココの兄弟たちは、いつもココのことを見守ってくれてるんだよ」
ふわりとほほ笑んだ。
「きっと今も、あの空の向こうから、ココのことを見ているに違いないね」
「……」
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