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オリーブの木の下で
F
 それを四匹の仔猫はしげしげと見つめている。
 四匹とも、あまりにも長いこと黙ったまま動かないので、ちょっと気味悪いくらいだ。
 いったい私の短冊が何だって言うの?

 「あいつ、俺たちのこと忘れてなかったんだな」
 ふいに、白地に黒ブチ・その二がつぶやいた。
 それにつられるように、ほかの三匹も次々に口を開く。
 「お星さまになった、だって」
 と、白い仔猫。
 「ちゃんと分かってくれてるのね、私たちが見守っていること」
 そう言うのは茶トラ。
 「うん。それに、僕たちのことを想ってくれてるんだね」
 白地に黒ブチ・その一の声は何だかとても嬉しそう。
 「嬉しいね」
 その言葉に、全員がこっくりと頷いたのが見えた。

 それにしても、いったい何なの?あの子たち、さっきから何をわけの分からないことを言っているのかしら?
 私が首を傾げながら四匹を眺めていると、四匹は突然立ち上がって、七夕飾りの周りをぐるぐる回り始めた。
 「きらきら光る、お空の星よ」
 「どうか願いを叶えておくれ」
 「雲よ、去れ。雨よ、降るな」
 「みんなの願いがお星さまに届くように」
 口々にそんなことを言っている。

 私はますます不思議になって、我慢が出来ずに四匹に声をかけることにした。
 「ちょっとあんた達――」
 その時、
 「可愛い妹の願いを叶えておくれ!」
 四匹の声がぴったり重なると、七夕飾りから空に向けて、まぶしい光が駆けのぼるのが見えた。
 「あっ――?!」
 それと同時に、四匹の仔猫の体も、たくさんの光の粒になって空へと昇って行く。
 「待って!」
 窓ガラス越しに、私は大きな声で叫んだ。
 すると、四匹は一斉にこちらを振り返り、にっこりと笑った。
 「ココ、元気でね。また来年ね」
 たしかにそう聞こえた気がした。
 「待って!待ってよ――!!」
 私は必死に四匹を呼び止めた。


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あきゅろす。
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