オリーブの木の下で
D
「さあ、これでよし、と」
「うわー、いっぱい出来たね」
しばらくして、出来上がった七夕飾りを見上げながら、私と莉子は満足そうに顔を見合わせた。
私と莉子が書いた願い事はたくさんあった。
・いつか莉子より大きくなって、莉子をぎゃふんと言わせられますように〈ココ〉
・ココがもう少し大人しくて可愛い猫になりますように〈莉子〉
・莉子と一緒にいっぱい笑えますように〈ココ〉
・これからもずっとココと楽しく暮らせますように〈莉子〉
・高明(たかあき)お兄さんのオカマ言葉が桃太郎と金太郎にうつりませんように〈ココ〉
・お隣の良平(りょうへい)おじいちゃんが、無事に旅行から帰ってきますように。それまで鈴子(すずこ)さんが寂しい思いをしませんように〈莉子〉
・水沢(みずさわ)先生と空(そら)が仲良し家族になれますように〈ココ〉
・みんなが幸せになりますように〈莉子&ココ〉
まだまだいっぱいあるけれど、主だったところはこんな感じ。
短冊のほかにも、金色と銀色の折り紙で星を作って飾ったり、なぜかクリスマス用の電球を取り付けてみたり。さらには、ついでだと言って風鈴までぶら下げてみちゃったりして。
結局、我が家の七夕飾りは、何とも個性的で賑やかなものになってしまったのだった。
七月七日は、朝からすっきりとしない曇り空。
せっかく立派な七夕飾りを作ったっていうのに、お星さまが見られなかったらどうしよう。そのうえ雨なんか降られたら悲しすぎる。
「夜までには晴れるかな?」
不安そうに私が言うと、莉子はテレビの天気予報とにらめっこしながら盛大なため息を吐き出した。
とりあえず莉子は会社があるので、私はその間ひとりでお留守番。
莉子が帰ってくるまでの数時間、退屈とひとりぼっちの寂しさを紛らわすために、私は猫ベッドの中でひたすらお昼寝に励むことにする。
「雨、降らないといいな」
そんな私の独り言も、やがて訪れた眠気とともに夢の中に吸い込まれてしまう。
夕方目覚める頃には、ちゃんと晴れてくれるだろうか?
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