オリーブの木の下で
C
お庭の真ん中のオリーブの木に竹をくくりつけて、私と莉子はさっそく短冊とやらを作り始めた。
色とりどりの折り紙を細長く切って、そこに願い事を書いていく。
「さあ、湖子は何て書いて欲しい?」
マジックを握りながら莉子が尋ねてくる。
「えっとね、うんとね」
私は莉子の膝の上に乗って、短冊を覗き込みながら懸命に願い事を考えた。
おいしいお刺身が食べたい。たまにはトロを思いっきり食べたいな。あ、あと、この間お土産にもらったかまぼこがとても美味しかったから、あれをもう一度食べたい。
それから、莉子が健康のためにって買ったヨーグルト。試しにもらったらとても美味しかったんだよね。今度は私にも買ってきて欲しい。
あとね、それからね……。
「何なの、それ」
頭上から莉子の笑い声が聞こえる。
「湖子ったら、いったいいくつ願い事をするつもり?それに、さっきから食べ物のお願いばっかりじゃない」
むっ。悪かったわね。
だって仕方ないじゃない。私は猫なんだもん。食べることと、寝ることと、遊ぶことくらいしか、楽しみなんてないんですからね。
「分かったわよ。トロとかまぼことヨーグルトね」
言いながら、莉子はそれを丁寧に短冊に書きとめていく。
莉子の字って、莉子の性格そのまんま。思わず笑っちゃう。
「あとはねぇ……。あ、そうだ。これも書いて。『いつかママのような素敵な美猫になれますように』って」
「はいはい。でも、それなら、これも一緒にお願いしなくちゃ」
そう言って、莉子が書いた短冊を見ると、
「何これ?『ココが乱暴者じゃなくなりますように』って、いったいどういう意味?!」
「そのまんまの意味よ」
しっぽをぶうぶうさせながら文句を言うものの、莉子はちっとも取り合わない。にこにこ笑いながら、出来上がった短冊を次々に笹の葉に取り付けていく。
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