オリーブの木の下で
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しばらくして、
「空(そら)――」
突然、先生が言った。すると、
「ワン!」
仔犬が嬉しそうに吠えて、お尻ごと激しく短いしっぽを振った。
先生はそれを見て何ともいえない優しい顔をすると、もう一度仔犬に向かって言った。
「空」
「ワンワン」
仔犬は嬉しくてたまらないらしく、先生の顔中をべろべろと舐めた。先生は苦笑しながら、でもとても嬉しそうに仔犬の頭を撫でている。
「そっか。お前が『空』か。俺の探していたのは、お前だったのか」
先生のその言葉を聞いて、私と莉子は思わず顔を見合わせた。そんな私たちに、先生が照れくさそうに説明する。
「ずっと前から決めていたんです。『運命の相手』だと思える子に出会えたら、『空』という名前をつけようって」
「じゃあ……」
私と莉子が顔を輝かせると、先生は笑いながら頷いた。
私たちの隣で、高明お兄さんも、桃太郎と金太郎も安心したようにほっと息を吐く。
良かったね。良かったね、空。
これからは、きっと幸せに暮らせるよ。
良かったね、水沢先生。
これからは、空と二人、きっと毎日楽しく過ごせるよ。
本当に良かったね。
《おしまい…?》
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