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オリーブの木の下で
A
 さて、ここで少し私と莉子の共通の知り合いについて話そうと思う。

 まずは、隣家に住むおばあちゃん。
 私がこの家にやってきた次の日、莉子は私をお隣のおばあちゃん――本人は「おばあちゃんなんてやめて、鈴子(すずこ)さんって呼んでね」と言っている――に紹介した。
 「新しい家族の湖子です。鈴子さん、どうぞよろしくお願いします」
 私を両手の上に乗せて、莉子は深々と頭を下げた。私も慌てて莉子の真似をする。
 すると、おばあちゃんは、そんな私たちを見て声を上げて笑った。
 「あら、まあ、ずいぶん可愛らしいこと。莉子さん、とうとう猫の子を産んじゃったの?」
 ……鈴子おばあちゃんも相当な変わり者だ。

 ちなみに鈴子おばあちゃんの旦那さんはおばあちゃんよりもっと変わり者らしく、ハーレーなんとかいう大きなバイクに乗って、暇さえあれば日本のあちこちを旅しているらしい。
 一度旅に出てしまうと平気で数カ月も家を空けるので、鈴子おばあちゃんは、広いお家にほとんど一人暮らししているようなものだそうだ。
 「ちょうどココちゃんがやって来る前の日に、ふらーっと出て行ってしまったの。だからココちゃんが良平(りょうへい)さんに会えるのは、きっと何か月も先になるわね」
 そう言って、鈴子おばあちゃんは呆れたように笑った。

 それから、少し離れたところにある丸太小屋のようなお家のお兄さん。
 名前は藤代高明(ふじしろたかあき)さん。職業はイラストレーター。
 このお兄さんはちょっと、と言うかだいぶ変わった癖を持っている人だ。
 いったいどんな癖かと言うと……。
 「莉子さん、仔猫もらったんだって?鈴子さんに聞いたわよー」
 「ええ、まあ」
 「あ、この子?真っ白で可愛いわね。あらっ、でもなんだか手袋してるみたい。あははっ」

 ね、もう分かったでしょ?このお兄さんは、言葉遣いが女の人のようなの。でも、いわゆるオカマさんというのではないらしい。
 「女姉妹(おんなきょうだい)の中で育ったせいね、たぶん。子供の頃から周りはみーんな女の子なんだもん。男らしくしろって言うほうが無理だと思わない?」
 というのが、本人の言い分らしい。
 この人も相当変わってる、と言うか変わりすぎている。なかなかのハンサムなのに勿体ない。
 


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あきゅろす。
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