猫目堂 C もみの木のてっぺんから街を見下ろしている五人の耳に、かすかに音楽が聞こえてくる。 「賛美歌だね」 教会に集まった人たちが歌っているのだろうか。五人はじっとその歌声に聞き入った。 「クリスマスか……。いいものですね」 しみじみと悪魔のアストがつぶやく。 隣にいた少年――アラエルが、冷やかすようににやにやと笑う。 「悪魔らしからぬ発言だね。クリスマスってなんだか分かってるの?」 アストはにっこりとほほ笑んだ。 「分かってますよ。大切な人に感謝する日。さきほどカイトがそう言っていたじゃないですか」 そのアストの返答に、アズライルも賛同する。 「そうだね。世界中の人が『誰かのために』何かをする日。家族や恋人や、友達のために……」 「もちろん動物たちのためにもね」 きっぱりとアラエルが言う。 「いつもよりほんの少しだけ、みんなの心が優しくなる日だよ」 カイトが言うと、全員が笑顔でうなずいた。そして、 「私たちも、何か贈り物をしませんか?」 ふいにアストが提案した。 「贈り物?誰に?」 アラエルが不思議そうに尋ねると、アストは花が咲くように口元をほころばせた。 「もちろん、それは―――」 「わぁ……」 空を見上げた人々の口から、次々に感嘆の声が漏れる。誰もが立ち止まり、空から降ってくる雪をうっとりと眺める。 柔らかな粉雪が、あたりをうっすらと白く染めていく。 「ホワイトクリスマスだ」 「綺麗だね」 そう言い合って、手を握ったり寄り添いあったりする。人だけでなく、犬も猫も鳥も……みんなが互いのぬくもりを分け合っていた。 そんな光景が、あちこちで見かけられる。 そしてまた南のほうの国では、 「見て見て、流れ星」 小さな子供が空を指さしてはしゃぐ。大人たちも動物たちも、その声につられたように空を見上げた。 たくさんの流れ星が、まるで雪のように空から降っていた。 その様子を眺めながら、人も動物たちもひっそりと手を握り寄り添いあう。 「ああ、とても素敵なクリスマスプレゼントだ」 「なんだか心があたたかくなるね」 ☆。.:*:・'゜★。、:*:。:*:・'゜☆。.:*:・'゜★。、:::*:・'゜☆。.:* :・'゜★。、::。.:*:・'゜☆::。 その日。 世界中のあちこちで。 人も動物たちも寄り添いあい、とても幸せな優しい気持ちで、いつまでもいつまでも夜空を見上げていた。 どうかあなたも空を見上げてください。 聖なる夜に。 きっとあなたへの贈り物が見えるはずだから・・・ Merry Christmas! [前へ][次へ] [戻る] |