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猫目堂
C
 「海斗、ずっとずっと探していたんだよ。お前がいなくなって、あれからずっと私はお前を探していたの」
 彼女の言葉に、猫は小さく頷いた。
 「知ってるよ。もう十年以上も、僕の帰るのを待っててくれたんでしょう」
 「そうだよ。私、お前に謝りたくて……それで、ずっと探してた」
 「どうして?」
 猫が不思議そうに尋ねる。
 「どうして謝るの?」
 「だって、私、お前にひどいことをしたんだもの。いくら子供だったとはいえ、つまらない独占欲でお前を縛って、そして、あんな酷いことを……」
 彼女の目から涙がこぼれた。


 まだ彼女がほんの子供だった頃。
 猫の海斗は、彼女にとって友達であり、また弟のような存在だった。いつも何をするのも一緒で、彼女はそれが当たり前だと思っていた。
 けれど海斗が大人猫になりはじめての恋の季節を迎えたとき、家に寄り付かなくなった海斗に、彼女は我慢ができなかった。
 「私の傍にいてよ」
 そう言って海斗を家の中に閉じ込めた。
 どうしても外に出たがる海斗を、強い言葉で叱ったりもした。
 しかし海斗は、彼女のほんの少しの油断を突いて、まんまと家から飛び出してしまった。
 彼女は急いで海斗の後を追いかけたが、海斗はあっという間にどこかへ行ってしまった。
 海斗の消えて行ったほうへ向かって、彼女は石を投げた。悲しくて悔しくてどうしようもなかった。
 「バカ!海斗のバカ!もう戻ってくるな!!」

 そして、海斗は本当にもう二度と戻ってこなかったのだ。


 「私、とても後悔したわ。あなたに我侭を押し付けて、酷いことをして……。あなたが帰ってこないのも無理はないと思った。あなたが私を捨ててしまって当然だと思った」
 「……」
 「それ以来、ずっと猫と暮らせないでいたの。あなたに申し訳なくて…」
 泣きながらそう言う彼女に、海斗は優しく諭した。

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あきゅろす。
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