猫目堂
G
都子の言葉に、絵梨香の瞳から涙がこぼれた。
都子のことをとても恨んでいたはずなのに、こうして都子を目の前にすると、不思議と怒りは薄れていった。ただ懐かしさと嬉しさだけがあった。
(私だって、ずっとずっと都子ちゃんに会いたかった)
それは、絵梨香の素直な気持ちだった。
黙っている絵梨香に都が言う。
「ごめんね、絵梨香ちゃん。ごめんね」
すると、
「都子ちゃん、私のほうこそごめんね」
「絵梨香ちゃん…」
「私、本当は、都子ちゃんのこと恨んでた。無視したことじゃなくて、都子ちゃんが、私を嫌いになったんだと思ってたから。それがすごく悲しくて、私だけが親友だと思ってたのが悔しくて。――でも、違ってたんだね」
「絵梨香ちゃん。……私のこと、許してくれるの?」
都子がそう尋ねると、
「うん」
絵梨香はしっかりと頷いた。
「絵梨香ちゃん、ごめんね。本当にごめんなさい」
泣きながら謝る都子に、絵梨香はぎゅっと抱きついた。
「都子ちゃんに会えて良かった。都子ちゃんの本当の気持ちが聞けて、都子ちゃんがこのくまを大事にしていてくれたことを知ることが出来て、私、本当に嬉しいよ」
「絵梨香ちゃん、ありがとう。私も良かった。絵梨香ちゃんに会えて、こうやって伝えることが出来て」
二人はしっかりと抱き合い、泣きながら笑った。
それから、都子は絵梨香の肩をつかんで、絵梨香の体をくるりと反転させた。絵梨香の視界に、またベッドに横たわる自分の姿が入ってくる。
絵梨香は思わずうろたえた。
だが、そんな絵梨香に、都子は力強くこう言った。
「大丈夫、怖がらないで」
「でも……」
「あなたは死なない。絶対に死なせたりしない」
「え?どういうこと?」
絵梨香が驚いて都子を振り返ると、
「絵梨香ちゃん、生きて――」
都子はそう言ってにっこりと笑い、思い切り絵梨香の体を突き飛ばした。
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