猫目堂
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** 弐万打大感謝 **
小仁沢希凛さまに捧ぐ…
【 一 番 星 】
〜『猫目堂』特別編 〜
せわしなく荷物を片付けていた希凛(きりん)の手が、ふとその動きを止めた。
「わあ、懐かしい。幼稚園の頃のアルバムだ」
さっさと終わらせなくちゃ。そう思うものの、一度ページをめくるとつい夢中で見入ってしまう。
どのページにも、少しセピア色がかった写真の中で、幼い笑顔がたくさん咲いている。それを見ると、とうに忘れてしまっていた記憶まで鮮やかに蘇る。
どれくらいそうしていたのか。いつの間にかすっかり日は傾いて、窓から差し込む西日が希凛の手元を明るく照らし出す。
最後のページをめくった途端、アルバムから何かがふわりと舞い落ちた。
「これ――」
それはひとひらの真っ白な羽。
羽を手に取った希凛は、それが挿んであったページを見つめる。
幼稚園の庭で、白い兎を抱いて笑う幼い希凛の写真。
「くーちゃん」
その瞬間、希凛の中に、決して忘れられない面影がくっきりと浮かび上がった。
幼稚園の片隅にあったウサギ小屋。
小さい頃から動物が大好きだった希凛は、率先して兎のお世話係をしていた。
何匹かいた兎の中で、特に希凛が仲良しだったのが、写真に写っている『くーちゃん』だった。真っ白でふわふわでとても可愛い兎だった。
「でも……」
羽を握ったまま写真を見つめていた希凛の顔がかすかに曇る。
「くーちゃん、病気で死んじゃったんだよね」
途端にちくんと胸が痛んだ。同時にその頃の悲しさまで鮮明に思い出して、希凛はいたたまれない気持ちになる。
その時だった。
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