猫目堂
B
「こんにちは」
明良が愛想よく声をかけると、女の子はゆっくりと顔を上げた。
「こんにちは」
嵐と明良を交互に見ながら、はきはきとした口調で挨拶してくる。
「四つ葉を探してるんだろ?」
「うん」
「どれどれ…」
そう言って明良が女の子の隣にしゃがみ込むと、
「一緒に探してくれるの?」
「うん」
明良が頷いた途端、女の子の顔がぱっと輝いた。
「ありがとう、お兄ちゃんたち。もうあまり時間がないから、すごく助かる」
そう言いながら、にっこりと明良に笑いかけ、そのままの笑顔で嵐を見つめてくる。
内心「まいったな」と思いながら、嵐もその場にしゃがみ込んで一緒に四つ葉を探し始める。なんだかんだ言いながら、実はかなりお人よしだったりする嵐なのだが、本人はちっともそのことに気付いていない。
そんな嵐の様子を見て、
「ありがとう」
女の子は本当に嬉しそうに笑った。
そうして、しばらくの間、三人で必死になって四つ葉を探していた。
しかし、なかなか四つ葉は見つからず、いつの間にか冬の太陽が西に傾きかけていた。
「そろそろ陽が暮れる」
何気なく嵐がそう言うと、女の子ははっとして顔を上げた。そして、まるで睨むように太陽を凝視する。
女の子の唇がかすかに震えた。
「お願い。もう少しだけ……」
切羽詰ったようにそう言う。
「大丈夫。見つかるまで付き合ってやるよ」
明良が励ますように笑ったが、女の子の表情は固いままだった。
「なあ、そんな泣きそうな顔するなよ」
困ったように明良が言うと、女の子は少しだけ顔をほころばせて、明良を見つめた。
「ありがとう、お兄ちゃん」
だが、
「そろそろ時間です」
いきなり声をかけられて、嵐と明良は驚いて振り返った。
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