猫目堂
晴れた空には天使が見えるA
あの事故以来、絵梨香たち家族は変わった。
妙な言い方かも知れないけれど、あの事故のおかげで、みんなが本当に大切なものに気付けたのかもしれない。
絵梨香はポケットから携帯を取り出すと、最高の笑顔でVサインをした自分をカメラにおさめた。
それから慣れた手つきですばやく文章を打ち込み送信する。
「なあに、自分の顔なんて撮って。いったい誰に送ったの?」
呆れたように苦笑する母親に、絵梨香はにっこりと笑って見せる。
「ヒ・ミ・ツ」
そう言いながら、絵梨香は携帯画面を確認する。
[メール送信しました]の文字。
あれ以来一度もメールが来たことはないけれど、このメールはきっと無事に届いているのだろう。
雲の上にいる大切な友達に。
『都子ちゃんへ。 私は今日も元気です。 絵梨香』
《おしまい》
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