猫目堂 晴れた空には天使が見える@ 4th ―Dear Friends― ねえ、知ってる? こんな風によく晴れた日に空を見上げると、真っ白な雲の透き間から天使が見えることがあるんだって。 そんなの絶対に嘘だって?信じられないって? うふふ、そうだよね。 でもね、天使って本当にいるんだよ。 だって私、天使に会ったことがあるの・・・ 「絵梨香ぁー、起きなさーーい」 階下から呼ぶ母親の声に、少女は急いで身支度を整える。 「はーい。今行く」 「夏休みだからってのんびりしてちゃ駄目よ」 「分かってるって」 本当に信用ないんだから――。そう少女は苦笑する。 服を着替えて、慌ててダイニングに身を滑らせると、夏物のスーツをきちっと着こなした父親がすでに朝食を食べ終えていた。 「あれ?パパ、今日は早いんだね」 「うん。今日は朝から会議があってね。少し早く出るんだ」 「そっかー。今日はパパと一緒に朝ご飯出来なかった」 娘の残念そうな口ぶりに、父親は思わず口元を緩める。 「今日は残業のない日だからな。帰りに絵梨香の好きなケーキでも買ってくるよ」 「本当?嬉しい」 そう言って無邪気に笑う少女の顔を、父親と母親はおだやかに眺める。 「いってきます」 「いってらっしゃい」 「いってらっしゃい、パパ」 妻と娘の笑顔に見送られて、父親は満足そうに玄関を出て行った。 その後ろ姿を見ながら、 「パパ、なんかすごく嬉しそう」 そう笑う少女に、母親はくすりと笑みをもらす。 「だって、本当に嬉しいのよ」 「……うん。そうだね」 [前へ][次へ] [戻る] |