猫目堂 F 数日後、メリッサがいた修道院長宛てに、メリッサに魔女の疑いがあるため裁判にかけるとの通知が来た。 修道院長はじめたくさんの修道女たち、そしてメリッサに救われた村人たちが、必死になってメリッサを助けようと教会に働きかけたが、彼らは聞く耳をもたなかった。メリッサは不当な魔女裁判にかけられ、あっという間に有罪になってしまった。 私には分かっていた。 これは、メリッサを陥れるために、最初から計画されていたことなのだ。メリッサの力と人気を恐れた中央の教会が、自分たちの保身のために、メリッサを魔女に仕立て上げたのだった。 魔女の烙印を押された者は火あぶりになる。 私はメリッサを助けたかった。あの子が無実の罪で殺されるなんて、とても耐えられなかった。 私は夜の闇に紛れて、メリッサが閉じ込められている塔に忍び込んだ。 「メリッサ」 「アスト――」 メリッサは私の姿を見ると、瞳に涙をいっぱいためて抱きついてきた。 私はメリッサの体をしっかりと抱き締めて彼女に言った。 「メリッサ、待っておいで。きっと君を助けてあげるから」 しかし、 「いいの」 メリッサは悲しそうに首を振った。 私は驚いて彼女の顔を見た。 「どうして?このままだと、君は火あぶりにされてしまうのだよ?」 しかしメリッサはただ首を振るばかりだった。 何とか彼女を説得しようとする私に、メリッサはまるですべてを悟ったような様子でこう言った。 「神の思し召しなら、私はそれに従うわ」 「メリッサ!!」 思わず私が叫ぶと、メリッサはふっとほほ笑んだ。 「私のこと、今でもそう呼んでくれるのはあなただけよ、アスト。ありがとう」 「メリッサ……」 「あのね、私、あなたにお願いがあるの」 「お願い?」 「ええ。あなたたち悪魔は、魂と引き換えにどんな願いでも叶えてくれるのでしょう?」 私はじっとメリッサの青い瞳を見つめた。星のようにきらきらと輝く、その澄んだ瞳を。 「魂の契約――お望みとあらば、汝の魂と引き換えに願いを三つだけ叶えよう」 私は乾いた声で言った。 [前へ][次へ] [戻る] |