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猫目堂
B
 (メリッサ……)
 アストは遠い昔、これと同じような花束を自分にくれた女性を思い出していた。
 思い出の中の彼女は、いつも出会った頃の少女の姿をしている。黒一色のシンプルな服を身にまとい、それなのに内から湧き出る魅力で七色のプリズムのように輝いていた女の子。

 「あのさ……」
 おずおずとカイトがアストに声をかけてくる。
 アストは目を開けると、優しくカイトにほほ笑んだ。
 「何だい?」
 「もしよかったら、そのメリッサさんのことを話してくれないかな?」
 「……」
 「あ、もちろん、アストが嫌ならいいんだよ。ごめん、変なこと言って」
 慌てて謝るカイトに、アストはまたしてもくすりと笑いをもらし、片手を伸ばしてカイトの黒髪を撫でた。

 「いいんだよ、カイト。気にしないで」
 「でも…」
 「メリッサのことを話すのは嫌じゃないよ。むしろ君に聞いて欲しい」
 アストが言うと、カイトは琥珀色の瞳をきらきらと輝かせた。それを見てアストはますます笑ってしまう。
 ラエルはそんな二人を見て、ただ黙ってほほ笑んでいる。
 「カイト、君はメリッサにとてもよく似ているんだ」
 「え?そうなの?」
 「うん。初めて会ったときから感じていたけれど、付き合いが長くなるほどに、ますますそう思うようになった」
 「……ねぇ、ひょっとして、メリッサさんって猫だったの?」
 真剣な顔でそう尋ねてきたカイトに、アストはたまらなくなって吹き出した。
 「いや、そうじゃなくてね。メリッサは―――」




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 初めて会ったとき、メリッサはまだ十六歳の少女だった。
 小さな村にある修道院の見習い修道女。早くに両親を亡くして、近くに親戚もなかったので修道院に引き取られ、そこで生活するうちに自然と修道女になることを決めたと言っていたよ。
 明るくて素直で、いつも笑顔を絶やさなかったメリッサ。
 修道女にしては多少お転婆だったけれど、修道院の誰もが彼女を愛していた。
ひと目見たら愛さずにはいられない。そんな魅力を持った娘だった。
 



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あきゅろす。
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