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猫目堂
A

 「どうぞ」
 黒髪の店員――カイトが、あたたかいミルクカラメルを少女に差し出す。
 少女は礼を言ってから、ミルクカラメルをひとくち飲んだ。
 「あたたかい……それに優しくて懐かしい味」
 少女の瞳が嬉しそうに細められる。
 そのまま少女は静かに二人に話し出した。
 「私が住んでいた家に、大きなムク犬がいるんです」
 「お名前は?」
 「ティオ。私が生まれるちょっと前から家にいたから、もう13歳のおじいちゃん犬。でも私、ティオが大好きだった……」



 少女と犬のティオは大の仲良しだった。
 少女が生まれたときから、ティオはまるで少女の兄のように父親のように少女の面倒を見ていた。
 少女も犬のティオが大好きで、二人はいつも一緒だった。
 「ティオーー!!」
 どんなに遠く離れていても、少女が名前を呼ぶと、ティオはいつも全速力で少女の元へと駆けていった。
 少女に飛びつき、千切れんばかりに尾を振る。そんな時は、少女も力いっぱいティオを抱きしめた。
 特に二人が好きだったのは、よく晴れた日のお散歩。
 近くの土手にタンポポが群生している場所があって、春になると毎日そこへ出かけていた。
 タンポポ畑の中に座り込んで、少女はティオのために花を編む。ティオは少女の傍らで、暖かい日差しにうつらうつらと眠り込む。
 しばらくすると、
 「ほら、ティオ。すごく似合ってるよ」
 出来上がった花環を、少女はティオの首にかけてはしゃぐ。
 「ティオは毛色が白いから、黄色いタンポポがよく似合うね。ティオ、可愛いね」
 少女が笑顔で言うと、
 「ワンワン」
 尻尾を振りながらティオがこたえる。

 本当に幸せだった。

 だが、そんな幸せな日々はある日突然消えた。


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あきゅろす。
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