猫目堂
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とある山奥の小さなバス停の近くに、小さなお店があります。
その扉には、こんな看板が・・・
《喫茶・雑貨 猫目堂》
『あなたの探しているものがきっと見つかります。
どうぞお気軽にお入りください』
さあ、扉を開けて。
あなたも何か探しものはありませんか?
【猫 目 堂 6th】
― Melissa ―
カランカラン……
入り口の木の扉がゆっくりと開かれると、ドアベルの高く澄んだ音とともにコーヒーの良い香りと新鮮な空気が流れ込んでくる。
アンティークっぽい家具や小物に囲まれた静かな空間。どこか懐かしい感じがするその店内に足を踏み入れた途端、
「いらっしゃいませ」
カウンターの向こうから、綺麗な顔をした若い二人の店員が声をかけてくる。
金髪のラエルと黒髪のカイト。
サイフォンから立つ湯気がゆらゆらと陽炎のように揺らめく向こうに、二人のやわらかい笑顔が見える。
「こんにちは」
そう言って椅子に腰掛けたのは、このお店の常連客の一人。長い黒髪を綺麗に結わえた美人。
「久しぶりだね、アスト」
カイトが親しげにそのお客の名前を呼ぶと、お客は花のほころぶような微笑を浮かべた。その美しさに、カイトは一瞬見惚れてしまう。
「しばらく顔を見なかったが、元気だったかい?」
ラエルが訊くと、アストは何やら意味ありげにほほ笑んでみせる。それから、カウンターに飾ってあるタッジーマッジー(※ハーブで作った小さな花束)に手を触れると、
「これは、カイトがつくったのかい?」
「うん。庭で育てたハーブがずいぶん花を咲かせてきたからね。綺麗なんで飾ってみたんだよ」
アストの質問に、カイトは嬉々として答える。
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