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Delusions ーshort storyー
Cross×Link(東西兄弟)
ベ.ル.リ.ン.の.壁.崩壊から20年経った際に書いてみたお話。
腐向けって言えば腐向け。腐向けじゃないって言えば腐向けではないです。←
ちょくちょく史実が絡んできます。
神羅=ルート設定です。










「……俺が守る!だからお前は…生きろ!この世界の為に……!」

俺は走った。

「なぁ、ルート!これからは俺らが“ドイツ帝国”の名を轟かせようぜ!」

思い出が、次々と脳裏に浮かぶ。

「同じ過ちは二度と繰り返さない…そうだったよな?」

嬉しかった事も、辛かった事も…何もかも全て。

「済まねぇな、ルート…暫く、お別れだ。」

そう言うと、ふっと切なそうに笑った。

俺はまだまだ未熟で、何も出来なかった。


壁を越えた。


喜びと興奮に満ちた叫びが響く雑踏の中で俺はある人物を捜した。


月に輝く銀髪で、燃えるような赤い瞳の…そんな人物を――…





「っはぁ……はぁっ……」


何時からだろうか、その人が側に居たのは。


「おいっ…しっかりしろよ!神聖ロー……」


その人の手には『彼』の血がべったりと付いていた。


「……れは、……のか?」


『彼』は…


「この世界から………亡びる…のか?」

「馬鹿を言うな!!お前は助ける、絶対に!」

「…………して、そんな事…」

「…俺が守る!だからお前は…生きろ!この世界の為にっ…!」


その人は血にまみれた『彼』を強く、強く抱き締めた。


呼吸が静かになってゆく。目は虚ろで眩暈は止まらず、何も考えられない。


そして、『彼』の目の前から光が消えた。




俺が次に光を見たのは、長い長い眠りから覚めた後だった。


覚める前、幼い俺は暗くて冷たい部屋でずっと泣いていた。


記憶が蘇る。嬉しかった事も、辛かった事も…何もかも全て。


だから、もう嫌だったんだ。






「なぁ、ルート!これからは俺らが“ドイツ帝国”の名を轟かせようぜ!」

「…………うん。」


これからは俺らが“ドイツ帝国”という国として、愛する民の為に、平和への道を辿って行こうと思っていたのに。


どうして…上手く形にならなかったのだろう?


泣き喚く他の国の民達。


俺はどうしようもなく…ただそれを正解だと信じるしか手は無くて。


だから仲間を置き去りにした時だって…


その仲間が滅亡に至る程の酷い怪我を負った時だって、どうしようもなく…


それでもあの人は…


「…ぅっ……くそっ………!」

「同じ過ちは二度と繰り返さない…そうだったよな?」


だったらもう繰り返すな、とあの人は遠くを見つめ、強く言った。


風が強く吹いた。


俺よりも多くの戦いを経験してきたあの人の顔は夕陽の逆光で見えなかった。






それから少し経って、俺達の東西支配が始まった。


「兄さっ…!」

「済まねぇな、ルート……暫く、お別れだ。」


そう言うと、あの人はふっと切なそうな笑みを浮かべた。

目の前の最後の光が壁に阻まれ、消えた。


そして今日――…

なぁ、兄さん…俺は貴方に伝えたい事があるんだ。






「本当に、ありがとう…俺の兄さんでいてくれて……生きていてっ……!」


自分の意思も関係無く、涙が次々と溢れてくる。


人はこれを、何と言うのだろうか。


「ヴェスト…………!」

「生きていて、本当にっ…!」


兄さんの顔はよく見えなかった。


けど、声は震えていた。



歴史は繰り返す、しかし俺達は過ちを繰り返さない為に歴史を記憶する。


思い出す度、辛い過去と思いが蘇る。


思い出せない時もある。


あの国は何故、滅亡したのか。


あの歴史は、何故に幾度も繰り返されたのか。


あの時、俺達はどうしたら良かったのだろうか。


そんな思いが込み上げ、ふっと闇へと掻き消される。


これからは先の光を見つめ、過ちも喜びも確りと記憶して――…。


「…ありがとな、生きていてくれて…」


俺らは何時までも喜びを分かち合っていた。












あとがき的な。

平和がいいよねって思いながら書きました。

私は壁の崩壊をリアルタイムでは見ていませんでしたが、世界中に衝撃を与えた報道だったと聞いています。

私が報道を見たのは何年も後だけど、皆が祈っている事は何年経っても変わらないはずです。

…って、何書いてんだろ…。




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あきゅろす。
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