[携帯モード] [URL送信]
シェルター
注意:捏造
ザンザスとU世



やめて。

そう、子供は泣いている。




「…ザンザス」

かたかたと震えながらルチアーノにしがみついたまま、ザンザスは返事もせず、ただただ腕の力を強めた。
超直感が訴える、ザンザスの悲しみ。
ルチアーノの持つ超直感は他の歴代と比べても強く、そして鋭い。
鮮やかなまでに感じとれる心情を口に出すことはしないが。

「ザンザス、座らないか?ソファに座ろう。な?」
「……ん」

小さな了承に優しく髪を撫でて、手を引いてソファに座らせる。
離れたくないのか、顔を見られたくないのか…恐らく両方だろう。
ザンザスはルチアーノの胸元に顔を埋め、その長い腕を腰に回した。

「…、なにか…あったか?」
「あった」
「どんなことだ?」
「…いや、な、こと」
「そうか…。聞いてもいいことか?それともスクアーロを呼んだほうが、」
「呼ばなくていい!!」
「………分かった、呼ばない」

優しく優しく。
髪を撫でて、背中を擦ってザンザスと同じ位の強さで抱き締めてやる。
ゆっくりと緊張の抜けていくザンザスの体を感じながら、ルチアーノは口を開いた。

「なにかあったんだな?」
「……っ、ん」
「本部か?…上層部になにか言われたのか?」
「ちが、う…。本部に来てた、同盟…」

震えが止まらない。

「なんで、」
「あぁ」
「…………っ」
「誰にも言わないぞ?」
「…なんで、俺が誘うことに、なる?」
「…そう言われたのか」
「ルチアーノ…っ」

見えてはいた、出来事。
舐め回すような下劣で、吐き気のする視線。
気配に敏感なザンザスが気付かないはずがない。
友好的な顔をして近付いて、いやらしく囁く言葉は殺してしまいたいほどに低能で下品だ。

(その場にいたら、)

同盟も何もかも関係ない、ザンザスが傷付いた助けを求めた。
それが理由。
牙を剥くのはルチアーノか、それとも今はいない銀色の剣士か。
本部の守護者は何をやっているのかと、ルチアーノは奥歯を噛み締める。
恐らく、ザンザスは強いからというイメージでも抱いているのだろう。

イメージという固定概念が人を、事件を隠すのに。

「知らない、俺は…誘ってなんか、ない、スクアーロだけ、なのに…っ」
「あぁ、分かってる。スクアーロだけが相応しい」
「なのにっ、あいつらが…誘ってるんだろうって、何人に、抱かれて生き残ったんだって…俺達にも、やれば、やれ、ば…っ」
「ザンザス。いい、思い出すな…口に出す価値もないぞ。無事でなによりだ…」
「会議が、始まったから…時間に助けられた…っ。ルチアーノ…、なんで?俺が、俺が悪い…いつも、なんでだ…っ?」

人間は勝手だ。
自分の都合を欲望を、弱者に押し付ける。
己の罪を、弱き者の罪にすり替えてしまう。

誘っている?
違う、お前たちが求めた。
それをザンザスの、この幼子の罪にする。
ルチアーノからすればザンザスなど幼子同然、つまりは守るべき存在。

どんな恐怖政治を押し進めようと、二代目ドン・ボンゴレは「守るために」全てを排除してきた。

「お前は、悪いことなどひとつもしていない」
「…でも」
「ザンザスにはスクアーロがいる。あの剣士だけだ、あの剣士だけに権利があるんだ、違うか?」
「違わな、い…。俺は、間違ってはない…?」
「間違ってなどいない。断言する、ザンザスは間違ってなどいない。お前が抱く嫌悪感も憎しみも悲しみも全てに正当な理由がある」

だから安心しろ。

ザンザスの瞳から零れた。
ようやく零れた、涙。
肩を震わせ強くすがり付き泣くザンザスの無防備な背中をルチアーノは静かに擦り続けた。

この幼子が歩いてきた道でどれだけの人間が背中を擦ってやったのだろう。
どれだけの人間が怯える幼子を肯定してやったのだろう。

どれだけの人間が、ザンザスを認めた?

分からないことに人は怯える。

未知は無知、それは恐怖。

「お前は優しい子だ、優しくて意地っ張りで可愛い子だ」
「…ふ、ぅ…子供、じゃ、…ねぇ…っ!」
「子供だぞ、お前は俺からしたら子供…。可愛い可愛い子供だ」
「…、ぅ…っ」
「泣いてしまえ…誰にも言わないから…。な?」
「ひ、ぅ…あぁぁ…っ!」

背中を撫でて、髪に口付けを落として。
肯定して認めてやればこんなにも素直な子供。

守るよ、愛しい子。





(ここに帰っておいで、君が泣ける温かな場所に)


[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!