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「…っ」
カイトが首を竦めたのを感じた。
「――へぇ…?」
耳まで真っ赤に染まったカイトを見下ろし、マスターは口角を上げる。
「狸寝入りたぁイイ度胸だな、カイト?」
マスターの頬がいつもよりほのかに赤い。
「あ…あの…っ、そういうアレじゃないんですよ?!ぁ‥その…今!今起きたんです!!」
そして、そんなマスター以上に真っ赤なカイトが慌てふためき、無理のある取繕いをする。
「下手なくせに嘘なんか吐くな。ンなモンすぐバレるんだよ」
「べっ別に嘘なんかじゃ…!」
同じ件で自分の数倍も慌ててるヤツを見てると、こっちの焦りが嘘のようにスッと引いてしまうから不思議だ。
すっかり冷静さを取り戻したマスターは相変わらずのカイトを余所に思う。
カイトはどもりながら、ぼそぼそと続ける。
「そ、その‥確かに『今、起きた』って言うのはちょっと語弊があるっていうか、でも狸寝入りとかそういう悪気があったわけじゃなくて……ただタイミングが悪かったんですよ。…まだおれがうとうとしてた時だったんです。その、マスターが‥おれに、なんていうか……」
先刻の出来事がフラッシュバックしたのだろう。
カイトの声が更に空気中にフェードアウトする。
「……」
マスターはそんなカイトをあえて黙り、凝視してみる。
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