お邪魔なアイツ p.1
「マスター」
「……」
背後から聞こえる、俺を呼ぶ声。
聞こえてはいるが、返事をせずカタカタとキーボードを叩き続ける。
「ますたぁ?」
「………」
声の主、ボーカロイドKAITOことカイトは声量を上げると再び俺を呼ぶ。
「聞こえてない」とかそういう理由で返事をしてないわけではない。
仕事が残っているから家に帰ってきてまで、こうしてパソコンに向かっているのだ。
…どうせまたくだらない話なのだろう。そんなものに時間を割いていられるほどヒマではないのだ。
「ねぇマスターってばぁ!!」
「……〜っ」
「マぁスぅタ――」
「五月蝿い!」
「!!」
遮るように短く怒鳴り、鋭く睨み付ける。
そうすると今までしつこく絡んできたカイトは、ビクッっと体を震わし静かになった。
しかし、ここで問題がまたひとつ。
「ぁ‥あの、ごめん‥なさい……」
必要以上に沈んだ声。
…厄介な事をしてしまった。
ハァ、と溜め息を吐く。
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