[携帯モード] [URL送信]
セピア色の夕日 / 跡部


 僕の愛する君と
 君の愛する彼と
 彼の愛する君と



 大すきなおまえを、
 おまえをあいつから奪って 
 俺のものにして

 それから..
 それから...



 (またあの夢か)

 最近同じ夢を
 幾度となく見るんだ
 しかも全部あいつの夢、

 すげえ幸せな夢
 幸せ色に染まっている夢

 俺、いっそこのまま夢を
 見たまま死ねばいいって思う



 だが幸せは長くは続かない


 いつものように終止符が
 打たれる
 いつも同じところで
 夢は終わってしまう
 お決まりのパターンだ。

 辺りはもう誰もいない
 放課後の教室
 しん、と静まりかえって
 いて窓からは夕日が差し込む




 (居眠りなんざ)
 (らしくねえな、俺)



 反動をおこし
 うつ伏せの状態から
 起き上がり椅子をひく





 (部活、行くかな)





 立ち上がり教室を出る、






 玄関までの渡り廊下
 窓からはやさしい
 セピア色の夕日が差し込む



 (─、まぶしい)






 そう思いながら
 目を細め夕日に目を 向ける俺



 いつもならだだ
 通り過ぎるだけだろう
  けどなぜだろう
 何故だか今日は目に
 焼き付いて離れようとしない





 中庭に散りばめられている
 硝子の欠片たちも反射して
 まるで万華鏡、
 目が離れない






 (─、あ)








 俺の体内に衝動が走る








 (─あいつ)








 鍵をはずしガラスの窓を
 一気に解き放つ






 (珍しい)
 (中庭にいるなんて)






 ─、こっち向けよ







 ─、向け








 小声で放った願い事
 当然聞こえるわけない








 ─、ふっ
 聞こえるわけねえよな










 ─、あ







 「(目が、合った)」







 (跡部)







 (珍しいねこんなとこ)
 (通るんて)





 ああ、俺はこれ以上どんな
 偶然を期待していただろう






 (あ、ああただ)
 (なんとなく)






 (そっかー)






 ああ、俺のこと
 なんとも思ってないなら
 そんな無邪気な笑顔で
 笑うなよ





 (お前こそなんでこんなところ)
 (いるんだよ?)





 そんな無邪気に触れるなよ
 (あ、彼待ってるんだ。)






 さっきの夢に戻りたい
 あいつからお前を奪って
 俺のものにしたい



 夢を見るように
 目を閉じても



 あの夢にはもう
 戻ってくれない





 (...そうか)




 適わないのなんて知ってる





 (うん、あ!彼来たみたい)
 (じゃあまた明日ね跡部)




 けど俺は






 ─、お前がすきなんだ






 (ああ、じゃあな)






 笑顔でサヨナラ
 ─、涙を隠すほどの
 笑顔でサヨナラ




 夕日はときどき優しい


 涙も悲しみも
 すべて隠してくれる

 「


 (涙よ、3秒だけとまれ)




[次]

1/10ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!