その笑顔が大嫌い(今吉)
「…………今吉くん」
小声で名前を呼んだら、くるりと振り返った。
なんで聞こえるんだ。凄く小声で言った筈なのに。
「なに?」
方言特有のイントネーション。こいつが言うと、なんか、凄く雰囲気がある。何処出身なんだろう、とか少し頭の中をちらついたけど振り払った。
そんな事どうだって良い。興味も関係もない。
「今日のお昼に代議員の集まりあるって」
「んぉ、わかった」
「…じゃあ」
素っ気ないのはわざと。代議員なだけあってこいつは人当たりが良くて人懐っこい。(厳密に言えばそう言うフリみたいなんだけど。)
「なあ美島」
「……何?」
「一緒に行っても良いか?」
「……何で?」
「ちょっと聞きたい事があるんよ」
「……良いけど」
「ん、あんがとな」
……こいつ…口ではありがとうって言ってるけど顔は『してやったり』って言ってるよね。
こいつは、苦手だ。
「お帰りー(友達)」
「ただいまー」
「…良いなあ…今吉くんと同じ委員会なんて…」
「別に良くないよ。疲れた」
「…ハルカって何で今吉くん嫌いなの?」
「嫌いなんじゃない、苦手なの」
「じゃあ何で苦手なのさ」
「……」
八方美人だからだよ。
―
――
「美島ー」
「……わかってる」
「…ん、行くぞ」
「……………」
授業が終わって、だからペンケースとノートを持って席を立った。
今吉が私の真横を歩く。
「…なあ」
「………何ですか」
顔を見ずに答える。
聞きたい事って何だろう。
「…何で敬語なん?」
「………別に良いじゃないですか。それで、何でしょう?」
出来るだけ早く済ませて欲しい。
「……何でそんなに冷たいん?」
……………貴方が苦手だから。
、とは言えないから、元々真っ直ぐ前を見ていた視線をちょっと反らした。勿論、今吉くんの反対に。
何、聞きたい事ってそんな事。
「別に理由なんて無いですよ」
「……それは、本心なん?」
「ええ」
「…そりゃあ良かった」
「え…」
何言ってんのこいつ。
「安心」
「、ッ!?」
「したよ」
突然、手を握られた。
「な、にしてっ…!」
今吉は、また、
してやったり、って顔で笑ってた。
その笑顔が大嫌い
「何のつもり」
「いんや、気にすんな」
「するっつの」
「……しいて言うなら」
「…」
「君が好き」
「…は?」
「膨らまして言うなら」
「……」
「君を愛してる」
「…………」
「それだけなんよ」
「………………」
「…………」
「……………………はぁぁあ!?」
「…なぁ」
「…」
「アンタ、俺のモンにならん?」
「…………」
「…………」
「…………」
「……訂正させていただきます。」
「はいはい?」
「………私、貴方が大嫌いです」
「…そう言うの大歓迎」
ツンデレ大好きなんよ、て耳元で今吉は呟いた。もの凄く嬉しそうな笑顔で。
「…私、ツンデレじゃありません」
「ははは」
「………厳密に言えば、ツンデレちゃんをぐずぐずのデレッデレにするのが好きなんよ。それに付き合ってくんない?」
「いやだ」
―――――――――
人に頼られるドS
つまり今吉さん(^^)
そんな今吉さんが好き
.
まえつぎ
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