ただ感謝と祈りと祝福を(笠松)
中学3年になって初めて
同じクラスになった奴に
恋をした。
勇気を出して告白して付
き合って、別れた。
嫌われた訳でも
他に好きな奴が出来た訳
でもなかった。
理由は彼女の性格にあっ
た。
誰にでも優しい彼女は、
本当に誰にでも平等で、
なつっこい性格と愛らし
い雰囲気に囲まれた、人
気者だったのだ。
俺が、我慢できなくなっ
たのだ。
自分勝手にも程があると
心から反省した。
だから、別れた後は1度
も話さなかった。
志望校に受かり、時間と
言うものは残酷な程正確
に流れ、俺達は今日、卒
業する。
「…お前花弁ついてんぞ
」
「へ?」
「頭に」
「うそ、取って取って!」
ふるふると首を振るもの
だから、花弁は俺が取る
前に落ちた。
「…笠松?」
―――目前には元クラス
メイト、元彼女の
美島ハルカが
いる。
頭ひとつ違うから、俺を
見る時自然と上目遣い
になる。
(う…)
付き合って居た頃はいつも
味わっていた距離感。今
の俺に免疫は無いに等し
い。
とりあえずバレないよう
に息をのんで黒髪に手を
伸ばす。
しかし、触れる寸での所
でちょうどよく(と言う
べきか、)吹いてきた風
に全部さらわれてしまっ
た。黒髪は夕焼けに焦が
されるように鈍く光った
。
どうすることも出来ずに
、重力に従って腕を下ろ
した。
「…取れた?」
「ああ」
素っ気なく踵を返して、
当たり前ながら反対方向
へ足を進める。
「笠松!?」
「…じゃあな」
身勝手、寧ろ不可解で理
解不能だと自分でも思う
。でも、だめだ。背を向
けずにいられない。何が
どうして
もう春なんだ。
1年ってこんなに短いも
のだったのか。
会わなきゃ良かったなん
て言わない、
惚れなければ良かったな
んて言わない、
別れなきゃ良かったとも
、言わない。
寧ろ感謝してる。
だから、もう一度この1
年をやり直したいと思っ
てしまう。
時間も余裕も度胸も無い
。
最後の最後に困らせるく
らいなら
何も言わない方がいい。
「笠松!」
「笠松!!」
「待ってよ!!」
「笠松ッ!!」
「……〜〜〜っばかっ」
「何で待ってくれないの…」
何と言われても構わない
。
「嫌だ…」
「もうあえないなんて嫌だよ…っ」
それでも、足は止まって
しまった。
「………ごめんなさい」
「…………」
「…っありがとう」
「………」
「ありがとう、ありがとう」
「…………」
「…ありがとうっ!」
…………何と言われても
構わないから、誰か俺に
泣く事を許してくれない
か。
ただ感謝と祈りと祝福を
自分の知らない自分に怯
えた。
馬鹿だった。
好きすぎて、
怖かったんだ。
――――――――――――
かっこ悪気な笠松先輩
卒業とかお別れは実際かーなーりー弱いです
.
まえつぎ
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