ショッキングブルー(高尾)
ふと眠りから覚めて、とりあえずしょぼしょぼする目をこすりながら起き上がる。部屋の中の温度はほどよく暖まった布団の中とあまり変わらなくて、ひと安心。うん、春って好きだ。理由はいともかんたんお手軽コンパクト。地球にって言うか日本にって言うか寧ろ私にエコロジーだから。優しさばんざい愛情ばんざい。
もう一度、寝ようと思い(いや、二度寝ではない、三度寝だ)ベッドに潜り込んだら、ふと背中に生暖かいものを感じた。
………。
いや、感じなかった。感じなかったぞ。うん。ものっそい具体的でノー割引な答えなんて、頭の中に浮かばなかった。背中に誰かの体温なんて感じない。感じないぜ!
「…なあに無かった事にしてんの?」
「ひぃいっ」
今の私にはギクッ、寧ろグキッと言う効果音が効果的である。
「その声は……………」
「……………………高尾和成くんでっす」
「やっぱり……」
「いや、今の話の振り方全然わかってない風だったよ」
「あ、ばれてた?」
そりゃあ犯人を絞るなんてそんな難しいこと、私には出来ないですから!
「…………」
「………いっかいこっち見てから見て見ぬふりされると傷つくなー」
ギクッみたいな。寧ろシャクッみたいな。
とか思ってたらぐいっと肩を引っ張られた。バスケ部のコイツに私が勝てる筈もない、だってさ、私女の子だもんね。
「やほー」
「………」
「何ー?まだ無視するつもり?」
「いえ、そんなつもりはまったく面目ないです」
「え、どういたしまして?」
「あれ?」
「え?」
、目があった。
ギラギラってくらいいつも光ってる高尾のツリ目は、なんだかしょんぼりしていた。いや、なんとなく、だけど。
「…………」
「そんなに見つめられるとドキドキします」
「お決まりの台詞だね」
いや、かんちがいだ。
恥ずかしくなって反対側を向こうとして、まだ肩に手が置いてある事に気付いて、糸 色望した。
必然的に見つめ合うみたいな形になる。
「………何未だに足掻いてるの」
「いいいいや、べっつに足掻いてなんかああー」
「じゃあ何か愛の言葉を囁いてよ」
「………は?」
「え、何、甘い雰囲気だったんじゃないの」
「え?」
「じゃあ違ってもいいや。何か囁いてよ」
「………ばーか」
「まあ、それもそれで可愛いけどね」
「かっ…!?」
「愛の言葉がいいなー」
愛の言葉って要求するもんじゃないだろフツー!
「はやくー愛の言葉を囁いてよー」
「……ああああ愛の言葉って略したら合言葉だよねっ」
「じゃあ俺等のための甘あい合言葉を考えてよ」
「そそそそんなに糖分足りてないならチョコでも買って食べなよっ」
「自分お金無いっすから」
「じゃあお手本に何か囁いてみ…」
てよ、と言い終わる前に、コイツは言った。
「好きだ」
「―…!?」
「愛してる」
「ななな…!」
「ずっと一緒に、いて欲しい」
「〜〜〜…」
「ちゃんと守るから、」
「………」
「大事にするから」
「…………」
「ちゃんと着いて来い」
「………………」
「だからちゃんと授業にも出なさい」
「アンタも出なさい」
そう言う事か。
確か昨日、宮地先輩が負けたってメールくれたよ(なんで宮地先輩私のアドレス知ってるんだ)。なんだっけ、すっごい影薄いキセキの世代?がいるところに(私マネージャーでも何でも無い筈なんだけど何で宮地先輩メールくれたんだ)。
きっとしょんぼり見えたのは、そのせいだ。
なんだろ。力不足とか思ってんのかな。
そんな事全然ない(ってカントクさんと先輩方の心の声も言ってた)と思うんだけど。
「あんまり見つめられると」
「ドキドキしてなさい勝手に」
だめだ優しくできない。
「ハルカもツンデレの気あるよな」
「どうだかしらないけど緑間にはカンペキに負けるね」
「そー?俺はハルカのツンデレのが好きだなー」
………。
「…………」
バカだなー。
「…お?」
気が付いたら、目の前にあった筈の高尾の顔が真横にあった。いや、受け身なのは高尾みたいだ。あれ?いや、あれだ。見つめ合う的な状況に耐えられなかったんだ。うん。反射だよね。
「あれ、何、突然デレなのハルカ?」
「突然デレで悪いかこのやろう」
「あ、デレなんだ」
「…………高尾」
「なーに」
「…おつかれさま」
「……!…おーよ」
「………」
意外とアッサリ返された。
「んでなに?俺はこの状況をどうしちゃえば良いの?」
「て言うか何で同じベッドに寝てたの?他に空きあったでしょ」
「ここで無視なのか」
「んで何な訳?特に無いならはやく別のベッドに行ってよ」
「行こうにも抱き締められてちゃ行けねーよ」
「あら、何の事かしら」
「俺もサボタージュしようと思って来たら空きが無くって先生に訊いたら此処を勧められたんだよ」
「色々メーワクだなオイ」
「ハルカ意外と胸あるね」
「ちょっどこさわって…!!せんせー!!!」
「C85ぐらい?」
「センセーーーー!!!!!!」
ショッキングブルー
ハキハキ生きましょう
――――――――――
ベッドの相席を認めた先生が助けてくれるわけもなく^^
他に空きが無いと言うのはきっと嘘
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まえつぎ
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