パロディ
想いの行き先(政→←幸)
※学パロ
※幸村がnot御座る口調
「匿ってくれ」
そう言って屋上に転がり込んだ政宗先輩の顔は既にげっそりしていて、今日が何の日なのか俺に思い起こさせた。
「何個目ですか?」
「もう数えてねぇ」
「…ご愁傷様です」
全身から甘い匂いを漂わせ、政宗先輩は仰向けにごろりと寝転んだ。
顔には不揃いな茶色のペイントがベッタリついている。
理由を尋ねるより早く先輩が口を開いた。
「何人か俺に直接ぶっかけやがった」
…何とも過激な。
まぁ、それほどまでにモテてるんだから仕方ない。
事実俺なんてそこまで………いや、そうでもなかった。
そういや俺も逃げて来たんだった。
甘い物は好きなのだが、女子が苦手な俺には今日は地獄だ。
「何で今日に限って学校あるんですかね」
「休みにすりゃいいのにな、俺達限定で」
「あ、それいいですね」
「だろ?」
喉の奥で笑う政宗先輩。
ふわり、甘い香りがした。
「先輩、食べました?」
「何個か…だが全部食おうと思ったら3日はかかりそうだ」
そう言って苦笑しているが、きっと全部食べるつもりなんだろう。彼はお人好しだから。
無意識に、手がポケットへのびる。ポケットの中の四角い箱……渡したら食べてくれるんだろうけど、所詮は何百個の内の1つ。
いや、それにも及ばないかも。
何せ、ラッピングした箱の中身は歪な塊。
惨めな思いをするくらいなら、いっそ自分で食べてしまおうか…
握り締めた所為でちょっと歪んだ箱を、ポケットから取り出して眺めてみる。
蓋を開けた時、箱の周りを影が覆った。
「もしかしてそれ、誰かにやるヤツか?」
「いやこれはその……って、あぁっ!?」
中身を見て、目が飛び出そうになった。
体温の高い俺のポケットに入れておいたのが、そもそも間違いだったのだ。
完全に溶けている。
歪だった個体は更に原型を無くし、箱の内側にへばりついていた。
「あー…なんだ、その…ご愁傷様?」
この惨状を間近で目にして、流石の政宗先輩も掛ける言葉を失ったらしい。
眉を下げて俺の肩に手を置いた。
あぁ、終わった。
折角、政宗先輩に作ったのに。
政宗先輩にあげて、今日こそ告白しようと思ったのに。
これじゃあ、駄目だ…。
「もう、自分で食べちゃおうかな」
溜め息混じりの呟きは彼には聞こえてないだろう。
と思ったけど。
「だったらそれ、俺にくれよ」
「………え」
一瞬、何を言われたか分からなくて、フリーズしてしまった。
聞き間違いじゃなければ、彼は今……。
「なぁ、駄目?」
「えっ、あ、コレ、ですか!?」
「他に何があるってんだよ」
狼狽える俺を見て楽しそうに笑う。
やっぱり、聞き間違いじゃない。
「でも、ぐちゃぐちゃですよ?」
「形なんざ関係ねぇよ」
ヒョイと箱をつまみ上げた政宗先輩は、溶けたチョコレートをその場で食べてみせた。
嗚呼、どうしよう。
今、凄くドキドキしてる。
口の端に付いたチョコをペロリと舐める仕草や飲み込む為に動く喉がちょっとやらしい、と思っただけじゃなくて。
……食べてくれた。
俺の、俺が作ったチョコを。
しばらくして、不意に政宗先輩が呟いた。
「…世界一の幸せモンだな、コレを貰うハズだった奴は」
「、え」
「It tasted great(美味かったぜ)!!ご馳走さん!!」
ポンと俺の頭を撫でて、政宗先輩は屋上を後にした。
「………あ、待って!!」
一瞬放心してた俺も、ワンテンポ遅れて屋上を飛び出した。
逸る心をそのままに、可笑しい程必死に足を動かした。
早く追いつけ。
言わなくちゃ、貴方ですよ、って。
貴方が大好きなんだって、伝えなきゃ!!
世界一の幸せ者の背中が、だんだん近くなっていった。
END
† † † †
後書き
去年から書きためていた話を修正しつつ、やっとこさお目見えです(^^)
片想いの話って、初めて書いたかもしれないです。
二人がどうなったかは、ご想像にお任せします…が、きっと結ばれますね(笑)
最近は友チョコやら何やら色々あるので、こういった光景ってもう見られないのかしら。
政幸はイベントに乗っからないと前に進めない位のピュアップルであって欲しいですな!!
では、此処まで御覧下さり有難う御座いました!!
水城
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