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パロディ
忘れられたメトロノーム(家三+親+就+政)
※大学生バンドパロ
※家三+親+就+政















「………何なのだ、これは」


ドアを開けた瞬間、三成は驚愕に口をあんぐりと開けた。
左手に持っていた楽譜がバサリと落ちる。


「長曾我部!!これはどういうことだ!?」

「え、俺?」

「貴様以外に誰がいる!!刻まれたいのか貴様!!」


三成は目の前の大柄な男を自らの鞄でベシベシ叩く。
叩かれる男は理由が分からず、問う。


「ちょ、待て!!これって何だよ!?」

「とぼけるな!!貴様の持ち物が散乱している!!ここは貴様の倉庫ではない!!」


確かに、部屋の中は教科書や雑誌、楽譜が散乱している。
しかも、ご丁寧に全てに名前が書かれている――長曾我部元親と。

ギャンギャン喚く三成の目の前で耳を塞ぐと、三成は一層眉間のしわを深くした。
完全にキレてるな、こりゃ。
元親がそう思って困った様な顔をすると、くぐもった笑い声が聞こえた。


「…何を笑っている、伊達!!」


三成の怒りの矛先は、ソファーに座った男、伊達政宗に向けられた。
政宗は、目にかかった前髪を掻き分けながら、Sorryと謝った。
が、未だ口元が意味ありげにつり上がっている。


「いやぁ…アンタが焦ってる理由が予測できて、な」


ニヤニヤと笑う政宗を、元親は不思議そうな目で見た。
元親には三成が焦ってる様には見えなかったのだ。
だが、言われてみるとそんな気もする。
心なしか、ほんのり顔が赤い。
ニヤリと笑って政宗は頬杖をついた。


「で、家康はいつ来るんだ?」


まさに一瞬。
顔から火が出たのではないかというくらい、三成の顔が赤くなった。
あ、そういうことか。
元親の中でぐるぐると渦巻く疑問が、やっと解消された。


「な、な、何故家康なのだっ!?」

「Ah?アンタが呼んだんだろ?」


なァ、毛利。
そう言えば、いつの間に来たのか、サークル長である毛利元就がドア付近で頷いていた。


「久々に徳川が遊びに来たいと言ったそうだな。だが、好いた男にこの小汚い部屋を見せるのは耐えられぬ、そういうことだな…まぁ、主に貴様が原因だな、元親」

「す、好い……っ!?」

「図星か?」


既に真っ赤な三成の顔が、更に赤味を増した。
顔から湯気が出てきそうだ。
切れ長の目をキョロキョロと忙しなく動かす。
図星をつかれた証拠だ。
それを見た政宗と元就が同時に笑む。


「貴様ら全員そこに直れぇえぇえぇえっ!!今から斬り刻んで…」

「来たぞ、三成〜」



噂をすればなんとやら。
入り口に、話題の家康が立っているではないか。
メンバーを怒鳴りつけた体勢のまま、三成はフリーズした。


「おぉ、久々に来たが結構変わったなぁ。何というか、生活感が出てきたな」


爽やかだが、言外に「汚い」と言っている。
一瞬体を固くした元親(元凶)だったが、未だフリーズしているらしく何も言ってこない三成に、少しホッとした。
政宗と元就は相変わらずニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。

そんな彼らの様子はさて置き、ぐるりと部屋を一通り眺めると、家康は奥に鎮座するドラムセットへと真っ直ぐ歩いて行った。
つい最近買ったばかりだという、真新しいドラムセット。
既に傷が付いてるそれを、家康は愛おしげに撫でた。


「…これが、三成の相棒か」


珍しく穏やかな家康の声。
僅かな間ではあるが自らの血と汗の滲んだドラムを、まるで恋人のように愛でるその様子を、三成はただ黙って見ていた。


「頑張ってるんだな。高校の時は豊臣先生にしか興味を示さなかったのに」

「……………」

「良かったなぁ、夢中になれることが出来て」


フン、とそっぽを向いた三成。
素っ気ない素振りをしながらも髪の毛から覗く耳が赤いことに気付いた家康は、満足そうに微笑んだ。



「さて、家康」


不意に政宗に声をかけられ、家康は顔を上げた。
いつの間にやら前方にはドラムだけでなくマイクスタンドと元親が立っていて、その両脇にギターを持った元就と政宗が居た。


「ちょうど新曲の練習をしようと思ってたとこだ。ドラムのsoloもあるぜ。聴いてくか?」

「本当か!?是非聴かせてくれ!!」


家康は瞳を輝かせてすぐさま彼らの前に座った。
じ、と穴が開く程に視線を感じながら三成もスタンバイする。





初めて出会った高校時代から何となく気に入らなくて、顔を合わせれば、原因などなくてもいつだって怒鳴り散らした。
馴れ馴れしいのが鬱陶しかった。
にも関わらず、家康は懲りずに三成に話しかけ続けた。

何度も。
何度も。

何に対しても全く興味を持てない三成を叱咤し、励ました。
いつの日からか、嫌悪感は消えていた。
しつこすぎる程の接触も、嫌いじゃなくなった。三成を変えたのは、他でもない家康だった。
感謝はしている。
家康が居なければ今こうしてバンドなどやっていない。

しかし、彼の性格上、言葉では上手く伝えられないから。






「じゃあ、いくぜ!!」



元親の号令で、全員が楽器を握り締めた。







嬉しそうに見ている友に、笑いかけることは出来ないけれど。


だからせめて、最高の演奏を――。











END






† † † †

後書き

いつだったか小ネタ部屋に書いたバンドパロ、ようやくお目見えです。
メンバーはvocal元親とguitar元就、bass政宗、drums三成です。

恐らく皆様ご察しの通り、今現在ワタクシ、家三に滾ってます(^^)
男前にツンデレ…最高じゃありませんか!!←何
いつか続きを、今度は親就や政幸も混ぜて書きたいものです!!

因みにメトロノームとは、テンポを正確に示す為の振り子式の器械です。カチカチ鳴ります。
最近では電子式のもあるとのこと。
…欲しい←

では、此処まで御覧下さり有難う御座います!!



水城

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あきゅろす。
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