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パロディ
凸凹(政+幸+半)
※警察パロ
※ギャグ
※半兵衛視点












(あ、今日もいる)



角を曲がった僕の目に入ったのは、2人組の男。
最近よく見かける。


(通学路なんだけどなぁ、ここ)


何となく近寄りがたくて、でもやっぱり気になって、こそりと電柱の影に隠れてみる。

男の1人は帽子を目深に被り、厚手のロングコートを着込んでいる。
(因みに今は夏だ。薄着が苦手な僕でさえ、半袖を着ている)

もう1人は黒のジャケットにジーンズというシンプルな格好をしている。
(でも恐らくブランド物。チラッとロゴが見えた)

そしてぱっと見ちぐはぐな2人は、親しげに会話している。
何だろう、何の繋がりだろう。

と、2人に動きがあった。
僕の居る前方の電柱に隠れたかと思えば、コソコソと目の前のアパートを見ている。
ストーカー?
いや、それにしては堂々とし過ぎてる。主に服装が。
じゃあ何だろう。
いい年して刑事ごっこだろうか。


とか何とか思っていたら。


バキッという派手な音と共に、突然ジャケットの男が宙を舞った。


(え、えぇーっ、まさか殴った!?)


いきなり過ぎる展開に頭はついて行けず、でも体は勝手に動いていた。


「すみません、大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫」


駆け寄ってみると、ジャケットの男は何事もなかったかのように起き上がった。
そういえば、顔は初めて見た。
鋭い左目、右目には眼帯。
そして形のいい鼻から流れる、赤。


「鼻血出てますよ」

「ん、大丈夫」


軽く言うと、男は持っていた鞄から箱を取り出した。
ボックスティッシュだった。
パッケージが白くて可愛い動物の、ちょっとお高いやつ。
それを取り出す動作はやけに手慣れていた。


「も、申し訳ありませぬ…」


その横で、眉を下げながら謝るコートの男。
よく見たら汗1つかいてない。
今日は30℃超えの筈だけど。


「そうだ、ちょっと聞きたい事があるんだ。いいか?」


ジャケットの男――そういえば政宗と呼ばれてた――が鼻を押さえながら言った。
ちょうどいい、僕も彼らの正体を知りたかったところだ。
ここで応えておけば何か分かるかもしれない。
場合によっては警察を呼ばなければならないからね。


「俺たち、こういうモンなんだが……ほら、お前も出せ、幸村」

「あ、はい!!」

そう言って彼らが胸元から取り出したのは、あろうことか警察手帳だった。
警察呼ばなきゃとか思ってたのに、まさかの本物だよ。


「あのアパートに不審な人物が出入りしてるとの事で、張り込み調査中なので御座る」

「2階のあの部屋だ。何か知ってる事があったら教えてくれないか」


張り込み中だったのか。
簡単に言って良かったんだろうか、僕が不審人物の仲間だったらどうする気なんだろうか。
というか、幸村と名乗った人は絶対に刑事ドラマの見過ぎだと思う。主に服装が。


「そうですね…女遊びが激しい事で、近所では有名です」

「そうか…なら1人1人洗ってくか…」

「政宗殿、女遊び、とは?」

「あ?そりゃあお前、手当たり次第に女と付き合う事だろ」


どうやらコートの刑事はそういった事に疎いらしい。
ジャケット刑事の説明に、彼はようやく顔を真っ赤にした。


「はっ、破廉恥で御座るぁぁぁっ!!」

「おぶっ!!」


また殴った。
すぐ手が出るタイプなのだろうか。
しかし、女遊びを知らなかった人が、今の適当な説明でよくいかがわしい意味だと分かったものだ。
彼の"破廉恥"の基準が分からない。
というか、今時"破廉恥"って。


「ま、政宗殿、申し訳ありませぬ!!」


再び地面とお友達になったジャケット刑事に駆け寄るコート刑事。
先程より出血している彼は、しかし何食わぬ顔で起き上がり、やはり慣れた手付きで新しいティッシュを取った。
普通なら怒鳴りつける場面だが彼は無反応だ。
ということは、きっといつもの事なんだ。

思わず憐れみの目を向けてしまった僕に、ジャケット刑事は気付かない。
と、その時、彼の目つきが変わった。


「…待てよ、奴が出て来た!!」

「ま、真に御座るか!?」

「あぁ。誰かと会う気かもしれねぇ。追うぞ!!」

「はいっ!!」


慌てて身支度をする2人を、僕はただ見る事しかできなかった。
スイッチの切り替えが早い。

準備が出来たところで、彼らは僕の方に向き直った。


「本日は貴重な情報、有難う御座いました!!」

「Thank youな。また何かあったら頼むぜ」


彼らは軽く会釈して、すぐに踵を返し駆け出した。
息の合った動作だった。







結局、不審者は捕まったのか、あとジャケット刑事の鼻血は止まったのか、僕は知らない。
あんな破天荒な感じで、彼らがまだ警察をやれているのかも、僕は知る由もない。

ただ。

警察があんな感じで街が成り立っているのだから、この街は平和なんだな、と僕は思った。










END







† † † †

後書き

久し振りのちゃんとした短編でした。
某友人と話してたら盛り上がって大変だった話です。

因みにこんな設定でした。
・政宗警部補…通称"鼻血刑事"若しくは"ティッシュ刑事"。腕は確かなのに部下の所為で昇進出来ない。
・幸村巡査部長…すぐに手が出るタイプ。無意識に毒舌を吐く事も。その所為で問題を起こしてばかり。

取り敢えず理不尽に幸村に殴られる政宗が書きたかっただけなんです(爆)
そして半兵衛視点の話を初めて書いた気がします。
書いてて楽しかったです!!

至らぬところばかりでしたが、ここまでご覧下さり有難う御座いました!!



水城

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