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パロディ
あたたかい (小十佐♀)
※家族パロで小十佐♀
※父・小十郎、母・佐助、兄・政宗(9歳)、弟・幸村(7歳)なありがち設定









あ、熱でもあるのかな。

朝、いつものようにリビングに降りた佐助の脳裏に、一瞬にしてそんな言葉がよぎった。

「あ、母上おきられましたか?」

目の前に居る少年、幸村が満面の笑みで振り返った。にっこり笑う顔はいつもの息子、なのだが。

「ゆ、幸ちゃん…それ、何?」
「なに…とは?」

キョトンとした幸村は可愛らしいレースの付いたエプロンを着ている。そして右手に握られているのは、お玉。料理に使う、あのお玉だ。

幸村は料理をしない、否、出来ない。以前冷蔵庫の食材を全て黒炭にしてしまったことがあり、それから彼は料理が嫌いになり、包丁は愚か食材すら触らなかったのだ。そんな幸村が、お玉を握っている。

だが息子の成長(?)を喜ぶよりも先に、佐助の頭の上には疑問符が浮かんだ。

「何でお玉なんか持ってるの?」
「今日のごはんは、それがしが作るのだ」

えっへん、と胸を反らす幸村だったが、その背後で既に鍋がふきこぼれている。

「あぁーっ、幸ちゃん!!鍋、鍋ぇーっ!!」

叫んで鍋に駆け寄る佐助。しかし、グイと腕を引かれ、後ろにひっくり返った。ボスッという間抜けな音がした。痛みはない。尻の下に座布団が敷かれている。

「ダメだぜmammy、ゆきのじゃましちゃ」

声の主は幸村の兄、政宗だ。座布団を置いたのは彼だったのだ。年の割に小さな手を懸命に伸ばし、火を弱める。キュッとエプロンの紐を結び、政宗は幸村の顔の前に人差し指を立てた。

「さっきdaddyが庭に行ったぜ。料理はおれがするから、ゆきは庭そうじしてきな」
「あい!!」

兄に向かってビシッと敬礼(目が思いっ切り隠れているのは敢えて言わない)して、幸村は庭へと走っていった。ちゃんと靴はけよー、と政宗が笑う。我が子の愛らしさに微笑みながらも、佐助の疑問はまだ消えてない。佐助は政宗の顔を覗き込んだ。

「ねぇ、政む」
「じゃあ、mammyはそこに座ってTVでも見ててくれよ」
「何で…わわわっ!!」
「い、い、か、ら!!」

グイグイと背を押されてソファーに座らされる。ニィと笑った我が子が鼻歌混じりに台所へと戻って行った。


「……変なの」

佐助の呟きは大音量のTVにかき消された。











† †† †


「佐助」

不意に聞こえた声に、顔を上げる。

「小十郎さん!!畑は?」
「追い出された」

首に巻いたタオルで汗を拭きながら話すのは、佐助の夫である小十郎だ。彼が話すことには、突然走ってきた幸村に「それがしが水やりするでござるー」とホースを横取りされたらしい。不安だらけだが、息子の申し出を断る訳にもいかず、渋々帰ってきたという。

「…俺の誕生日、今日だったか?」
「いや、違うよ。一体どういう風の吹き回しだろーね?」

小十郎がソファーに座った頃には、台所にいる政宗の鼻歌が熱唱に変わっていた。大分空耳で覚えているらしい80年代の洋楽を聞きながら、小十郎は佐助の細い肩に腕を回した。

「ま、今日くらいは甘えとけ。最近働き詰めだろ」
「アンタもね、小十郎さん」

ふふ、と佐助が笑えば小十郎の口にも笑みが浮かんだ。

ふと横を向けば、ベランダから、花壇に水をまく幸村の姿が見えた。口を大きく開けて、自作の歌を歌っているらしい。かなりの大音量なため、政宗の歌と混じって不協和音を奏でている。小十郎と佐助は思わず吹き出した。

と、幸村の自作ソングの歌詞に気になるフレーズがあった。


「かっ、かっ、かんしゃー♪きろんうかんしゃー♪」

「…ん?」
「"きろんう"…?」

佐助はカレンダーを見てみた。祭日を表す赤文字が示していたのは、


「あぁー、今日は勤労感謝の日か!!」

ポム、と手を打った佐助の言葉に小十郎も納得したように息を吐いた。

「ふ、そうか…どうりで政宗も幸村も、めったにしない家事をしたがる訳だ」
「でも間違ってるね、幸ちゃん」
「"きろんう"か、惜しいな」

再び、居間に2人分の笑い声が響いた。あたたかな、笑い声が。


「Hey!!ごはん出来たぜ!!」

何時の間にか止まっていた歌声に気付くと同時に、息子の声が聞こえた。そしてドタバタと響く足音。

「兄上のごはんでござるー!!」
「あ、ゆき!!ちゃんと手洗えよ!!」
「あい!!」

我が子の微笑ましい光景に、顔を見合わせて笑う。

「さ、俺達も行くか佐助」
「わぁっ!!」

グイと腰を引き寄せられた佐助は、顔を真っ赤にして叫んだ。

「ちょ、政宗と幸ちゃんに見られる!!」
「見せつけてやればいいさ。俺達の仲の良さをな」
「…馬鹿!!」

ペチリと軽く背中を叩いた佐助は耳まで真っ赤に染まっていた。


2人は寄り添ったまま、息子達の待つ食卓へと向かったのだった。









END









† † † †

後書き

2010年勤労感謝の日&良い夫婦の日記念文でした(o^∀^o)
1日遅れましたが!!←

初めての家族ネタです!!
正直、佐助女体化しようか迷いましたが、結局しちゃいました。
全く活かされてませんが\(^p^)/グフッ
因みにタイトルは、あたたかな家庭、みたいなイメージで付けました。

…え、何で2つのイベントを1つに纏めたかって?
面倒くさいからに決まってr(ry←


では、此処まで読んで下さり有難う御座いました!!



水城

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