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唐突に放たれた右ストレートの打撃をブラッドは左手の甲でその軌道をずらせ受け流す。同時に素早くその組員の背後へ回り込む。


罪人とオルリビアが間近で対面する形になり二人の視線が一瞬交錯。先にブラッドが外す。


発砲音と同時に振動。

撃たれたのはブラッドが自身の防壁の為に利用した背後の組員だった。発砲位置はおよそ特定できている為、撃たれた組員の肩越しに右掌の銃口を突き出す。狙いはビル出入り口を固めて銃器を構えている組員の群。


オルリビア周囲の組員が、最悪の事態に気付き制止の声を上げるが間に合わない。


互いに手にした銃爪は引かれた。


連射される着弾の威力で背後の密着した男が痙攣し血煙を上げ続ける中、ブラッドの銃器もまた猛火を噴き続けていた。


入口付近の組員が罪人の正確な射撃により次々と倒れ伏していく。


味方による流れ弾により、ブラッド周囲の組員も少なからず負傷しており場に転がっていた。


ブラッドへの障壁の役割を果たし終えた組員が、白目を剥きコンクリの地面へとようやく沈む。

絶命した組員の全身は連射され続けた弾丸により蹂躙され、見るも無惨な状態だった。


オルリビアが軽く目を見開く。


罪人との僅かな戦闘で、四十四名居たヴラスト組員が既に半数以上戦闘不能に陥っていた。


現在、場に佇んでいるのはブラッドとその背後に居た無傷のオルリビア、二人のみ。


罪人の手際は実に冷徹で冷酷だった。

放たれた銃弾の全てが最初から、組員の急所に狙い絞られ確実に射抜かれていた。

斟酌や無駄は一切省いた、一挙一動総じて必殺の行動。


正にSS級に恥じない凄腕の傭兵の実力だった。


罪人を前にし、オルリビアは逃げなかった。いや、正確には動けなかった。


ブラッドがビル出入り口の組員を攻撃と並行して、抜かりなく左掌の銃口を常時オルリビアに向けていたのだ。


「詰みだな」


不敵に笑うブラッドと同様に、オルリビアも微笑んでいた。邪悪な笑顔だった。


「なら、やってみるがいい」


両手を大きく広げ、ブラッドの狙撃を誘う。

上司に銃口を向けられて、這いつくばるようにし流れ弾から生き残った組員も容易に手出しできない。


泰然と不気味に笑むオルリビアに、僅かに首を傾げた罪人。










──だが、次の瞬間、引き金は引かれた。







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