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桜舞う



懐かしさに溢れた涙を拭って詠は桜を見上げた

毎年通っているこの庭園も人手に渡り今は開放公園となっていた

毎年桜は花をつけるのに

あれから詠は祖父を急に亡くし父の元に帰り普通に就職して会社員になった

母親は相変わらず行方不明だったが最近になって元気だと一枚の葉書が届いた

今になって義孝のことは夢だったのかと思うこともある

それでもいつも心のどこかにひっかかっていて義孝を想うと芯から温かくなる部分があった

勝手に詠が待っているだけだが再会を思うと震えるような幸せを感じられる

「……それでも独りは寂しいな」

淡い桜のように記憶は薄れゆく

虚空に消えた詠の呟きに桜の花びらがひらひらと舞い落ちた


桜色の影に影が伸びてくる
「………詠さん」


降って来た懐かしい声が胸に響く

顔をあげないまま詠の胸が震えた



END




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あきゅろす。
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