桜舞う
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何度かけなおしても不通音ばかりで繋がらない
何度かかけなおそうとした所、手の中の携帯が震えた
画面を見ると柳義孝と表示されている
躊躇ったが詠は結局電話に出た
「もしもし?今どこですか?お父様が…話している途中に…」
泣きそうな詠の声に電話の相手が息を飲んだのがわかった
『詠さん、落ち着いてください。お父様は体調不良で暫く入院されることになりました。マスコミが屋敷に押しかけてますから私が迎えに行くまでマンションで待っていてください』
「入院って、何かあったんですか!?」
『いいえ。お父様の体調は良好です。しかし入院する。つまり、そうゆうことです』
淡々と義孝は告げると電話を切った
まるで温度のない声はあの日を思い出させる
詠はもう知らないふりはできない
義孝はこれを望んでいたのだ
しかしどうして祖父に自分を預けたのだろう
詠も一蓮托生にしたほうが祖父を味方にできず、より父親を追い詰められた筈だ
ほとぼりが冷めたら祖父が孫可愛さに母親不在である詠の“父親”を援助するだろう
ましてや母親は若い男と逃げた負い目もある
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