桜舞う
・
『創立記念の50周年パーティは予定通り開催するそうだ。楽しんでくるといい。お前は、お祖父さまが後見人となるのだから将来が約束されたも同然だ。わしとは関係ない道を歩く。わしみたいには、ならない…』
詠は息を飲んだ
これはきっと全部、高岡と義孝がしでかしたこと
胸騒ぎがする
しかしまだこれは終わりではない気がする
屋敷の契約書はともかく、父親を陥れるそれだけならば詠を子飼いにする理由がない
ポケットの中にある義孝から貰った石を探りあてる
あの日から肌身はなさず持っていたが
疑惑が胸に渦巻く
石を握ってから詠はきっと前を見据えた
「…すぐに帰ります。僕だけ、逃げたりできません」
電車が構内に滑りこんでくる
『………さようなら』
静かな声に詠は目を見開く
電話が不通音を告げる
収賄事件なんかで父親が命を絶つわけがない
実刑はくらうだろうが祖父もいる
したたかで狡猾な父親がこれくらいで死ぬわけがない
頭ではそう考えるのに嫌な胸騒ぎが収まらない
嫌な汗がこめかみを流れる
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!