桜舞う
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憧れでもあり密かに好意をよせている義孝の前での侮辱はひどい辱めに感じた
表情を変えることなく控える義孝を見てから詠は不味くなってしまった食事に視線を落とした
ひどい侮辱だが詠には言い返す材料を持ち合わせていない
「………期待に応えられずすいません。お父さん」
ふんと片目だけあげた父の目に失望が映り、詠はそのまま味気無い食事を終えて席を立つ
寒々しい廊下で唇を噛んだ
早く大人になって自由になりたい
傍から見れば金持ちでなに不自由ない生活、自分ではなにひとつ満足に出来ない坊っちゃんが何を贅沢言っているのかと思われるだろう
でもそれでもこの家は冷たくて重苦しくて、たまに窒息死しそうになる
「詠さん!」
自室のドアノブを引く途中で呼び止められたのは今になって思えば彼の計画の始まりの合図だったのだろう
「詠さん、待ってください!少し散歩にでも行きませんか?」
走って追ってきただろう義孝のそう言った顔は心底詠が心配だと物語っており
目には熱い熱を孕み、とられた腕には逃さないとゆう意思表示があった
大人で違う世界の住人のような義孝はその美貌だけで生きていけるような気がする
彼に夢中にならない人間なんていないのではないか
彼に送られる熱い秋波を詠は嫌とゆうほど見てきた
それを思い出して詠は首を振ろうとしたが強引に腕をひかれた
「気分転換ですよ。人生には大事なことです」
片目を瞑る義孝に心臓が軋むような音をたてた
簡単に腕をひかれて連れ出される
大きな腕の温かさに好きだとゆう言葉が自然と胸に溢れた
「………いいですよ」
詠の口から自然と滑り落ちたのは承諾の言葉だった
父は外で愛人を作り夫婦仲は冷めきっていて、息子は落ちこぼれ
今にも崩れそうな家庭を支えているのは間で立ち回ってくれる義孝のおかげだと詠にも解っていた
義孝と話をすれば少しは自分のしけた運勢が上手く転ぶかもしれない
そう思い詠は義孝と連れ立って歩いた
文化遺産にも指定された庭園は手入れが行き届き都心でありながらその広大な敷地面積のせいか静かだ
夜の虫の音を聞きながら庭を歩く
義孝の背中を追いながら、ふとその背中に触れてみたいと思った
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